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注目区を歩く(1) 東3区(加須市) 保守票巡る攻防が鍵

 「千葉さんは信頼できる人物です。議席を獲得できるよう、力添えをよろしくお願いします」

 県議選告示日の三月二十九日午前、加須市内の神社で開かれた自民党新人の千葉達也(56)の出陣式。県議を十一期務めて引退する県政界重鎮の野本陽一(79)が登壇し、後継指名した千葉への支援を訴えた。

 野本や野中厚衆院議員、大橋良一市長が熱い視線を送る中、千葉は河川改修など各種事業の推進を掲げ「五十六歳の新人です。国、県、市の強い絆を守り抜きます」と声を張り上げた。

 現在の加須市は二〇一〇年に旧加須市と騎西、北川辺、大利根の三町が合併。一五年の前回選挙から選挙区割りも市域と同じになり、定数も増えた。野本は、定数一だった旧東3区(旧加須市)の時代から議席を守ってきた。

 自民県連副会長で選挙を主導する立場でもある野本は他陣営を念頭に「無所属だけど保守系だから当選すれば、自民に入るということはない。よっぽど自民が(過半数を割る)窮状に立たない限り、現状ではあり得ない」と断言する。

 野本がけん制するのは無所属新人の高橋稔裕(35)だ。高橋は元銀行員で、義理の祖父の秋山清(91)に勧められ、県議選に挑んだ。

 秋山は旧東4区(旧大利根町など)選出の元県議で、県議長や自民県連幹事長を歴任。千葉陣営幹部の野中との間には、〇七年の県議選で無所属新人の野中に敗れた苦い過去がある。

 「私は三十五歳、四人の子を持つ父親。若い力で新しい風を皆さまの暮らしに吹き込みたい」。高橋は二十九日に旧騎西町内でマイクを握り、子育て支援の施策などを力説した。ともに九十代の元町長と秋山の元後援会幹部が聴衆を前に秋山の実績と高橋の若さを強調し、世代交代を訴えた。

 高橋陣営は「保守系無所属」を主張する一方、秋山支持者の高齢化などから「与野党問わず幅広く票を集めたい」(選対関係者)と明かす。無党派層への浸透も狙う高橋は週末の三十一日、花見客でにぎわう「さくらまつり」に顔を出し、支持を呼び掛けた。

 若さをアピールする新人二人に対し、自民現職の柿沼トミ子(71)は実績や人脈、女性の視点を前面に打ち出す。柿沼は県職員、旧大利根町長を経て、一二年に当時県議だった野中の辞職に伴う旧東4区の県議補選に無所属で出て初当選。現在は県地域婦人会連合会長などの要職に就く。

 多くの女性が参加した二十九日の出陣式では、子育て支援などの持論を展開し「子ども食堂を増やす活動をしている。熟年者の技の伝承の場にもなる」と力を込めた。三十一日の街頭演説には、無投票で早々と当選を決めた近隣の熊谷、羽生両市の自民県議が応援に入り「経験が豊富」などと柿沼をたたえた。

 旧東3区と4区が一つになった前回選挙は、自民現職二人が一万一千票台の互角で当選。上田清司知事が支援した政治団体「プロジェクトせんたく」の新人は九千票余で涙をのんだ。今回は「世代交代」を機に「野本票」「秋山票」といった保守票を巡る攻防が鍵を握る。柿沼陣営の幹部は「三人はどんぐりの背比べ。開けてみないと分からない」と警戒感を強めている。 =敬称略 (中西公一)

 ◇ 

 全五十二選挙区のうち、過去最多の二十二選挙区が無投票となった県議選。それでも、残る三十選挙区では、九十七人が激しい舌戦を繰り広げている。選挙イヤーの今後を占う注目の選挙区を歩いた。

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(定数2−候補3)

高橋稔裕 35 会社役員 無新 

柿沼トミ子 71 (元)大利根町長 自現<2> =公

千葉達也 56 加須市商工副会長 自新 =公

 

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