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注目区を歩く(3) 南17区(志木市) 無風一転、現新一騎打ち

 告示日の三月二十九日、五期目を目指す無所属現職の鈴木正人(50)が、東武東上線志木駅東口で第一声を上げた。二十三年前に志木市議に初当選して以来、市内に根を張って活動してきた鈴木の知名度は高い。だが、その声に耳を傾ける聴衆はまばらだった。

 「準備期間がなく、有権者の反応が薄い。『あれっ、出るの?』と声を掛けられることも多い」と鈴木。

 鈴木は昨年十二月、「義父母の介護に専念したい」と不出馬を明言した。南17区の立候補表明者は、元市議長の無所属新人河野芳徳(よしとく)(40)=自民推薦=のみで、無投票の公算が大きいとみられていた。ところが、三月二十五日。告示の四日前になって鈴木が突然、前言を撤回して出馬を表明。一転して、現新による激しい一騎打ちの様相となった。

 二〇一五年の前回選挙時は、上田清司知事が支援した政治団体「プロジェクトせんたく」の代表を務めた鈴木。「義父母が快方に向かい、上田知事からも『家族が賛成なら出た方が良い』と背中を押された。有権者に投票の選択肢を提供したい思いもある」。唐突にも見える心変わりの経緯を、こう釈明する。

 不意打ちを食らった形の河野は憤りを隠さない。「鈴木さんは新年会を含むあらゆる場所で『出ない』『出ない』と繰り返してきた。有権者にうそをついたことになる。私には理解できない」と首を振った。

 河野陣営には「ぎりぎりまで出馬を表明しないことで、われわれの油断を誘う戦術だったのではないか」とのうがった見方もある。河野自身も「無投票ではないかとの意識はあった」と明かすが、その一方で「選挙は何があってもおかしくない。準備に怠りはなかった」と自信を見せる。

 告示日の出陣式には、自民の穂坂泰衆院議員(45)のほか、自民と公明の市議、香川武文市長(46)らが駆け付けた。香川は「鈴木さんが辞める前提で船出した。さいは投げられた」と河野支援を明言。告示後の週末には河野と連れ立ち、子育て世帯が多い住宅街や団地を自転車で巡るなどして支持を訴えた。

 鈴木と河野は、もともとは同志。前回選挙では鈴木の選挙対策本部に河野が入り、二人並んで万歳した間柄だ。

 「志木の発展には国、県、市をつなぐパイプが欠かせない。国の穂坂さん、県の私、市の香川さんがそろえばパイプができる」。河野は、鈴木とたもとを分かった理由をそう説明する。

 対する鈴木は「介護の実体験を通じて私は一皮むけた。介護離職ゼロや、介護休暇を取りやすい仕組みづくりを目指す。もう一度、県のために働かせていただきたい」と訴える。

 出馬を後押しした上田知事も熱心に支援。告示日は夕から夜にかけ、翌三十日も午前中から、自らの遊説車に鈴木と共に乗り込み「知事と地元選出の県議がスクラムを組めば、こんなにも志木は発展するんだ」と過去の実績を数え上げた。

 無風から打って変わっての激戦。かつての同志のつばぜり合いは、熾烈(しれつ)を極めていく。 =敬称略

 (加藤木信夫)

    ◇

(定数1−候補2)

河野芳徳40 (元)志木市議 無新 =自

鈴木正人50 会社役員 無現<4>

 

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