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激戦を終えて(下) 分裂の旧民進党勢力 会派強調奏功も“現状維持”

国民の木村さん(左から2人目)の街頭演説で「頑張ろう」と訴えた立民の田並さん(同3人目)=5日、さいたま市のJR武蔵浦和駅前で

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 県議選も終盤に入った五日、南10区(さいたま市南区)のJR武蔵浦和駅前であった国民民主党現職の木村勇夫(51)の街頭演説で、最後にマイクを握ったのは既に無投票当選を決めていた立憲民主党現職の田並尚明(ひさあき)(53)だった。

 「実は僕は立民なんですが、立民だろうが国民だろうが仲間です。木村さんを当選させてください」

 国民の玉木雄一郎党代表や大野元裕参院議員に囲まれながら、党が違うはずの田並が「頑張ろう」と気勢を上げた。

 木村の周囲に設置されたポスターに大きく書かれていたのは、支持率が低迷する国民の党名ではなく「立憲・国民・無所属の会」の県議会の会派名。選挙カーやたすきに表示したのも会派名の方だ。

 選挙戦後、国民県連の大島敦代表はこう振り返った。「立民と国民が同じ会派を組んでいることがありがたかった」

 民進党が立民と国民に分裂してから初めての統一地方選。県議会では両党は同じ会派を組み続けていて、今回の選挙でも各候補者を同じ選挙区に立てない「すみ分け」をして戦った。

 県内が地盤の枝野幸男が党代表を務める立民に比べ、国民には苦戦も予想された。国政では対立することもある両党が「相互推薦」は難しい中、国民の候補たちが選んだのが「立憲」の二文字が含まれた会派名の強調。統一マニフェストもつくり、会派名が目立つ冊子を大量に配った。

 立民側の一部から「便乗だ」と揶揄(やゆ)する声も上がった戦略は、結果的に成功した。国民は新人一人を含む四人の候補全員が当選し、立民も現職五人全員に加えて新人二人も当選。改選前の計八人から計十一人へと勢力を拡大させた。

 ただ、その評価は難しい。両党の新人が当選したのは、もともと民進党が議席を持っていて、県議の国政挑戦などで欠員になっていた選挙区。実質的には現状維持にすぎず、立民は枝野のお膝元であるさいたま市内の二つの選挙区で新人が敗れている。

 両党は、今夏の参院選では一転して議席を奪い合うライバルになる。立民県連は四年後の「すみ分け」には消極的な姿勢で、微妙な関係の行方は見通せない。

 国政野党では、共産党も議席を伸ばした。南13区(上尾市・伊奈町)や西7区(川越市)などで次々に自民に競り勝ち、荻原初男県委員長は「今後の戦いにつながる」と自信を深める。それでも、議席は五から六への微増で、目標の八には届かなかった。

 自民は現職六人が落選し、二つの三人区で議席を取れていない。そんな苦戦の中でも単独過半数を維持できたのは、過去最多の二十二選挙区が無投票になり、二十三人が戦わずして当選できた影響が大きかった。新藤義孝県連会長は無投票区を「他が立候補できないくらい安定している選挙区」とするが、実際は野党の力不足が要因だ。

 擁立が十人にとどまった立民県連の高木錬太郎幹事長は「(候補を立てなかった)四十二選挙区では立民に期待している人の投票先がなかった。政党としての責任は非常に重い」と語る。

 個々の選挙区では健闘した野党勢力。四年後は、有権者にどれだけの選択肢を示せるかが問われることになる。 =敬称略

 (井上峻輔、浅野有紀)

 

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