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川崎市 引退市議に聞く

 川崎市議会は十五日、現職市議の任期最後となる定例会を閉会した。二十九日告示、四月七日投開票の市議選(定数六〇)は、現時点で現職五十八人のうち十人が出馬しない意向を示しているが、胸中にどんな思いを抱いているのか。議長も務めたベテランの坂本茂さん(68)=七期、川崎区、自民=と、「ここが変だよ地方議員」の著書もある小田理恵子さん(47)=二期、幸区、無所属=に、自らの活動を振り返ってもらった。 (大平樹)

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◆坂本茂さん(68)=7期 話し合い重ね結論 見守って

 −引退を考えたのは。

 周りの議員は、ほとんど全員が年下になった。スピード感をもって時代に対応するには若い人にバトンタッチした方がいい。

 一九九一年から市議を続けてきた。地方議員は家内制手工業みたいなところがあり、妻も気の休まる時間がなかった。妻は数年前から体調がすぐれず、子ども三人も独立した。彼女の荷物を降ろしてあげたいと思い、夫婦で話し合った際に自分から提案した。

 −時代の変化を感じることは。

 市も市議会も電子化が進んだ。今は質問の原稿もパソコンで作るが、若手のころ、手で書いていたのが懐かしい。インターネットが普及し、自分のホームページなどを通じて市民から意見や要望が多く寄せられるようになった。半面、一件一件に丁寧に対応していたら夜中までかかることもある。議員の調査活動に支障が出ると感じ、手紙とファクスの対応に戻した。

 −議員生活を通じて実現できたことは。

 二〇〇三年から二年間議長を務めた際、議会改革を進めた。無駄な会議をやめたり、(本会議などへの出席時に交通費として支払われる)費用弁償を一日当たり七千円から実費に変更したり、十八項目を改めた。市の試算では数億円の削減につながったようだ。慣例を改めることに反発もあったが必要なことだった。

 −有権者は市議会をどう見ればいいのか。

 市民の要望は多様で、それぞれの立場から政治を見ようとすると思う。ただ、自分が応援する議員の側からしか見ずに他の勢力を否定すると、偏った意見になってしまう。議会を一つの家庭と思ってほしい。やんちゃな子もいればおとなしい子もいるが、話し合いを重ねて最後には結論を出すので、見守ってほしい。

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◆小田理恵子さん(47)=2期 市議同士 意見交換なかった

 −引退の理由は。

 日本は人口減少の時代に入り、世界の政治状況も変わってきた。市議の活動を通じて他地域とつながりもできた。社会のために何ができるかを考える中で、川崎のためだけの活動を続けるのは難しいと感じた。

 市の新年度一般会計当初予算は将来にツケを回す内容。減債基金からの新規借り入れが含まれている。十五日の市議会の採決で反対したが、修正できなかったので結果責任を取ろうと。それも理由の一つだ。

 −会社員から市議になって驚いたことは。

 常任委員会などで市職員と質疑を重ねることはあっても、市議の間で意見を交わす機会がほとんどない。言いたいことを言う性格で、たたかれると覚悟していたが、それもなかった。

 予算を減らす議論がないこと、また、予算の裏付けがないまま政策的議論をすることにも驚いた。家庭や企業なら、使える金額の範囲内で何に使うか考える。市も市議会も危機感が欠けている。

 −実績に何を挙げるか。

 予算の使い方に関する議論の透明化や行財政改革を進めたかったが、十分にできなかった。地方議員は、いかに地元に予算を持ってくるかが実績として評価されることが多い。経済が右肩上がりの時代はそれで良かったかもしれないが、全国的に財政状況は厳しく、市に何をさせなかったかも実績として評価されるべきだろう。

 −市議選で有権者には何を望むか。

 とにかく投票に行ってほしい。投票する人が増えれば市議にも多様性が生まれる。投票先を決められない場合は、性別や年代、出自など、自分に近い属性の候補を選ぶといいのでは。関心や問題意識も近いはずで、当選後に望むような意見を出す確率が上がる。

 

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