「年の半分だけ議会に行けば高額報酬」「議場で寝てても給料がもらえる」。県議と県内の政令市議は年収一千万円を超えるなど、何かと批判が集まりやすい地方議員。本当に報酬に見合った仕事をしているのか。議会がないある一日、二人の男性議員に密着し、実態に迫った。 (志村彰太)
「おはようございます」。午前七時ごろ、三十代の県議が活動をまとめたチラシを街頭で配っていた。手に取ってもらえるのはまれ。中には不快な表情を浮かべる人もいる。「たまに受け取ってもらえれば十分」。肌合いを感じながら渡したいと手袋はせず、凍える手でチラシを配り続けた。
一時間ほど街頭に立った後、午前中に地域の催しなど六カ所を回った。一カ所当たり数十分しかいられなくても、「誘われて顔を出さないと支持を失う」。午後は祭りに参加して演劇を披露し、夜は地域の有力者の会合に出席。午後八時ごろ帰宅した。「今日は早い方です」
ほとんどの地方議員には運転手も秘書もいない。自らハンドルを握り、予定を管理する。家族の協力も不可欠で、この日は妻らが祭りに顔を出していた。県議は「選挙がある四年に一回、失業する可能性があり、生活の保障も休みもない。去年休んだのは二日だけ」と語った。
三十代の横浜市議も「議員の仕事は外から見えにくい。説明責任を果たす手段」として毎朝、駅前で議会での取り組みを訴える。
「議員になれば高級外車に乗れると思った」と冗談半分で話す。実際は中古の小型車。政策研究の書籍購入や出張で出費がかさみ、節約して生活している。
午前十一時、地域づくり団体が集まる会合に参加。議論が長引き、正午すぎに「すみません。次があるので」と途中で抜け出した。車を三十分運転し、市役所での審議会に出席。終了後は地元に戻って業界団体の懇親会と、住民が集まる夕食会に参加し、日付が変わる頃、家路に就いた。
帰宅後は睡眠時間を削って翌日の議会の準備をする。本来はもっと政策研究に時間を割きたいが、有権者の困り事を聞くのも大切な仕事と自覚している。別れ際、私生活について聞くと「プライベートなんて、この業界にはないよ」と答え、家の中に消えていった。
◆ある横浜市議議会のない1日
11:00 地域づくり団体の会合に参加し、昼食を取りながら街の課題を聞き取り
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