交渉会派の人数変更を決めた議会運営委員会=川崎区で
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二月十四日、川崎市議会の議会運営委員会でのこんなやりとりを経て、議会でいつから続くか分からない長年の慣例が変更された。
市議会で代表質問ができる「交渉会派」の人数は三人だったが、五人に引き上げられた。自民が昨年秋に議運で提案していた。
現状は四会派あり、所属議員は自民十八、公明十二、みらい十一、共産十人。その他七人は無所属だ。改選後の会派が五人未満であれば、この改定に従って代表質問はできない。多数派に有利な変更といえる。
代表質問は、福田紀彦市長ら市側に提出議案への見解などを問える貴重な機会だ。会派結成のハードルが高くなると、代表質問に立つ議員が減り、ひいては市民の市政に対する判断材料が減る恐れもある。
「両手両足を縛られているようなものだ」。無所属の男性議員は自嘲気味に語る。会派にしか認めない権利があることで発言力は強まり、存在感を示したい議員たちは所属したがる。
一方、会派は全員が議案への採決態度をそろえるのが一般的。市側が意向をつかみやすく、議案を否決される恐れは低くなる。議会運営が円滑になるメリットはあるが、無所属議員は「市側に主導権を握られ、なれ合いを生みやすい」と指摘する。
実は昨年末ごろ、無所属議員六人が、代表質問ができるよう、採決態度を拘束しないことを条件に会派結成に動いたが、紆余(うよ)曲折を経て、実現しなかった。
無所属議員は代表質問はできなくても一般質問はできる。ただ、提案中の議案はそこで問えない。慣例をまとめた「議会運営の手引き」には一般質問を「議案を議了したのち」に行うと明記されている。総務省の担当者は、この慣例を「全国調査した訳ではないが、聞いたことがない」と評した。無所属議員は、本会議で市に論戦を挑むにあたって不利な環境に置かれている感はぬぐえない。
会派所属の議員たちは、一般質問の持ち時間の長さなどで無所属議員に配慮していると強調する。一方、無所属議員たちには不満が根強い。議会のルールを決める議運に、会派所属議員しか参加できないことも「数の論理が横行している」と批判する。
無所属議員たちは三月定例会最終日の十五日、市条例の不備を改正する議案を提出したが、多数会派による反対討論もないまま、あっさり否決された。結局、今任期の四年間に議員側が提案して実現した条例改正は、市職員の給与改定に合わせた期末手当の引き上げを除くと一件もなかった。
無所属でも会派所属でも、票を集めて市民の負託を得たことは同じはず。少数派の前に慣例という厚い壁が立ちはだかっている。 (大平樹)
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