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県議選 合区、1増 票の重みは

 七日投開票の県議選は、南足柄市と足柄上選挙区が人口減により合区(定数一)になった。両地区から出る県議は一人減ることになり、「困難を抱える地域の要望が届きにくくなる」と懸念の声が上がる。一方、代わりに定数が一増えた川崎市高津区では「必要性を感じない」と冷めた意見もある。二つの選挙戦を追った。 (西岡聖雄、安田栄治、志村彰太)

◆南足柄市・足柄上「県西の声ますます届かぬ」

 「政令市選出の県議に仕事はほとんどない。県西地域の方が、県と交渉する機会が多い」。南足柄市・足柄上選挙区の男性候補は、支援者を集めた会合で合区を批判した。三百八十平方キロの同選挙区は横浜市(四百三十七平方キロ)の九割の広さなのに、定数は四十分の一。この候補は「人口だけで定数を決めていいのか」と問題提起する。

 選挙戦は、前回自民公認で当選した現職一人ずつと、新人一人が争う。ところが今回、党県連は現職二人に公認を出さず、推薦にとどめた。党が候補を絞らなかったことで地域が割れる要因になっているといい、支援者からは「表だって応援すると『あの人はどっち派だ』と言われてしまう」と恨み節が漏れる。

 旧南足柄市選出の川上賢治元県議(80)は「こんな広大な地域を一人で見るのは無理だ」と断言した。開成町の男性は「県西地域の声はますます県に届かなくなる」と嘆いた。

◆川崎市高津区 定数増「必要性を感じない」

 一方、人口増で定数が一増え三になった川崎市高津区。無投票だった前回から一転、現職二人と新人三人が立候補した。市議選の候補者と一緒に街を回るなどし、存在感のアピールに腐心する。しかし、ある新人候補は「政令市では、県議は仕事も人気もないからなり手不足。定数増は必要ない」と話す。政令市選出の県議の必要性を問うため、あえて出馬したという。

 冷ややかな有権者もいる。演説を聴いていた主婦(62)は「何をしているか分からないのに、なぜ定数が増えるのか」と疑問を呈す。女性(60)も「地方の議席を確保すべきだ」と主張する。これに対し、現職候補は「県と政令市の調整をするなど、仕事はある」と反論。選挙戦では、医療や防災など広域調整が必要な課題を中心に訴えている。

 市民の立場から選挙制度改革を考える「選挙市民審議会」共同代表の片木淳弁護士は「権限が移譲されたとはいえ、県には政令市にも関係する仕事が多くある。定数を減らせば一票の格差の問題が生じる。県と全て同じ事務権限を持った『特別自治市』が実現しない限り、解決は難しい」と指摘した。

 

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