◆河村和徳・東北大准教授に聞く
統一地方選では県議、市議選などで無投票になる選挙区が続出しそうだ。身近な行政をチェックする大切な役割があるのに、なぜ、なり手がいないのか。河村和徳・東北大准教授(地方政治論)=写真=に聞いた。 (聞き手・城島建治)
「立候補にコストがかかり過ぎる。県議選なら六十万円、市議選なら三十万円の供託金が必要。選挙運動に携わるスタッフへの報酬、後援会パンフレットの印刷費などに最低でも百万円はかかるといわれる。支持者を増やすための会合を開く必要もあり、時間と労力がかかる。新人、特に若者が立候補しづらいのはこのためだ」
「議員の役割が低下していることも影響している。情報公開を進め、住民サービスの向上を重視する首長が増えた結果、住民は議員に頼らなくても、自治体に直接、要望を出せるようになった。その結果、陳情などの仕事が減り、議員の地位が低下した」
「立候補すれば、公務員は自動失職する。ほとんどの会社員も、会社を辞めなければならない。収入源がなくなるのに、当選する保証はない。しかも、後援会、知名度、資金がなければ、当選は簡単ではない。落選すれば収入はなくなる。みんな生活がかかっているから、無理したくない」
−なり手不足は報酬の低い地方の町村議で深刻だが、最近では都会の県議選でも無投票が増えている。
「県が政令指定都市に多くの権限を移譲した結果、県議より政令市議を希望する人が増えている。政令市は多くの権限を持っているので、議員としてやりがいを感じるのだろう」
「有権者は貴重な一票を投じる機会を奪われる。それが続けば、身近な政治への関心も薄れていくだろう。候補者としても無投票が続けば、自分の政策を分かりやすく有権者に伝える努力を怠ることになるし、有権者から監視されているという意識も低くなる。結果として、有権者不在の地方自治が続けられることになる」
「新人や若者が立候補しやすいように、地方選も国政選挙のように、政党中心に行う必要がある。また、定数一の選挙区だと無投票になりやすいので合区し、定数二以上の選挙区を増やすべきだ」
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