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<縮む地方議会>(中)上がらない区部の競争率 なり手不足、都心も

2015年統一地方選の区議選で最も競争率が高かった世田谷区で、告示を前に街頭に立つ立候補予定者=4日、同区で

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 「後継者を探していたけれど、断られちゃって」。荒川区で区議を九期三十六年務める鳥飼(とりがい)秀夫さん(70)は、無念そうに話した。後継者が見つからないまま、今期で引退する。

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 人口の一極集中が進む東京の区部でも、議員のなり手は多くない。立候補者数を定数で割った競争率を見ると、統一地方選の区部の平均は、第二回統一選(一九五一年)の三・一二倍をピークに下降。九五年に一・一八倍で底を打ち、ここ五十年間、一・五倍以下で推移し、市議会や町村議会より若干高い程度にとどまっている。

 前回統一選の二十一区議選では、荒川区が一・一三倍と最も低く、最高の世田谷区は一・六四倍。三十代の世田谷区議は「いい競争原理が働いている」と評価する。区の推計では二〇三〇年ごろに人口が十万人増え、百万人を超す。「人口とともに多様性が増せば、それぞれの声の代弁者が選挙に出てくる」と楽観的だ。

 しかし、地方自治や選挙制度に詳しい片木淳弁護士の口調は厳しい。「区部ならば、より幅広い人材が手を挙げる中から選ばないと、いい議会にならない。そもそも、なり手不足は人口減少だけが原因じゃない」

 立候補に二の足を踏む理由の一つに、議会への無関心さがある。「議員が若い世代と接する機会がない」と世田谷区議の諸星養一さん(68)が自らを振り返るように、有権者を政治に引きつけられていない。

 片木弁護士は「都会の住民は地域のつながりが弱く、公共的な利益や自分たちの環境をどうするかに無関心。やりがいを感じづらいのではないか」と分析。つながりが弱ければ、地盤よりも立候補者の肩書や容姿が有権者の判断材料となりやすく、結果はその時の「風」にも左右される。

 競争率が低いとはいえ、人生設計を変えることへのリスクは高い。鳥飼さんは嘆く。「前は議員年金があったけど、今はゼロでしょ。『年金がなければ、かみさんに相談できない』なんて断られた。しかも当選すれば年収が一千万円くらいあるけど、落ちたらねえ。会社員なら路頭に迷う」。さまざまな職が選べる都会で、四年後にどうなるか分からない不安定な議員には魅力を感じにくい。

 このような状況を変えるためにも、片木弁護士はこう提案する。「国が供託金を廃止したり、企業が休職、復職を認めたりするなど、社会全体で踏み込んだ改革が必要だ」

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