インターネットが普及した平成の間に、地方議会の議論の様子をネットで見られるようになった。本紙が関東1都6県の県庁所在地、政令市、東京23区の計31市区議会に実施したアンケートによると、全ての議会が本会議の映像を配信していたが、半数以上の議会が傍聴者に議会内での撮影や録音を認めていない。専門家から「開かれた議会」に合っていないとの指摘も出ている。 (渡辺聖子)
東京都葛飾区議会は、二〇〇六年に本会議のインターネット生中継を始めた。ところが、傍聴席まで足を運んだ傍聴者には、撮影や録音を認めていない。ある区議に理由を尋ねると、少し間があって「変ですね」。議会改革の検討事項にも上がっていないという。議会側が自ら発信している議場を、市民が撮影・録音することは認めないという不思議な事態が続いている。
葛飾区議会の傍聴規則は「撮影、録音の禁止」を定めており、撮影や録音の機器を持った人は傍聴席に入ることができない。「議長の許可を得た者を除く」とあるものの、「基本的には禁止事項」と議会事務局は説明する。申し出があった場合も本会議前日の議会運営委員会に諮ることにしているため、傍聴当日の申し出に対応していない。
三十一市区議会のうち、本会議の撮影を認めないのは十六議会。録音は十八議会が認めていなかった。理由は「議事運営に支障が生じる恐れがあるため」(北区)、「議会の申し合わせ」(中央区、文京区)など抽象的な説明が目立つ。多くが規則で「禁止」や「制限」を定めている。
地方自治に詳しい専修大の小林弘和教授によると、このような規則ができた背景には、議員の居眠り写真や、発言の一部を切り取って意図的に編集した音声の拡散を防ぐ狙いなどがあった。「ネット中継をする時代に合っていない。市民に親しまれるオープンな議会を目指すのであれば廃止すべきだ」と指摘する。
ネットでの生中継や録画中継は、三十一市区のうち早い自治体は〇三年に始まり、一六年までに全議会が導入。ただ、配信内容は「本会議だけ」「録画限定」など、ばらつきが見られる。中央区議会は本会議の録画のみを配信。導入自体も一六年と最も遅かった。各区議の質問時間が会派の規模で異なるため、「ネット配信される時間の不平等につながる」との声が出て、持ち時間の差の解消を待った結果という。
今回の統一選では一部の候補者が「議会の生中継」や「傍聴者の録音」を公約に訴えているが少数派だ。
首都大学東京の長野基(もとき)准教授(地方自治論)は「映像を流すことは議員に緊張感を持たせるメリットがある」と話し、「議会が市民に公開されている以上、傍聴者が撮影や録音ができることが当然だ」と指摘する。
<アンケートの方法> 3月中旬から下旬にかけ、関東1都6県の県庁所在地と政令市、東京23区の議会を対象に実施。メールやファクスで各議会事務局から回答を得た。
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