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群馬

「売り上げに影響」不安広がる 「争点の現場から」迫る消費増税

2019年7月1日 紙面から

にぎわい復活を目指す高崎中心市街地の商店街。迫る消費税増税に揺れる=高崎市で

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 七月四日公示、二十一日投開票の参院選では暮らしに直結する消費税増税が争点の一つになる。安倍政権は十月の消費税率10%引き上げを表明。一方、主要野党は反対を掲げ、真っ向からぶつかる。県内の事業者には売り上げへの影響や軽減税率への対応などで不安や戸惑いも広がる。「商都・高崎」で地域に密着する商店主らに聞いた。 (石井宏昌)

 「売り上げに影響はするだろう。でも大変なのはお客さん。うちは地元のお年寄りのお客さんが多いから心配ですよ」。高崎駅からやや離れた市街地のスーパーの男性店長は懸念する。

 周囲は昔からの住宅が並び、駅前のにぎわいは及ばない。この地で五十年近く続く店を継いだ店長は「うちは地域の店。近所や買い物に出るのが大変な高齢者のお客さんが多く、景気が良くも悪くも来てくれるけど、客単価は減るだろう」とみる。

 食品や生活用品、文具など扱う商品は幅広いが、食品と総菜で売り上げの七割を占める。レジ四台は税率アップや軽減税率の対策済みだが、キャッシュレス決済をした買い物客にポイント還元する制度への対応には消極的だ。

 「うちは偶数月の十五日は売り上げが良くなる。年金の受給日だから。年金で暮らすお年寄りがほとんどですよ」と店長。「たぶんキャッシュレス決済を始める人も少ない。食品は軽減税率の対象といっても家計全体への影響を考えれば(他の商品を含め)支出を削るでしょう」と話す。

 その上で「増税は社会保障や財政健全化のためなどと言われてきたけど、広く薄く取るというのは本当に公平なんですかね」と不信感を漏らした。

 高崎市の街中にある南銀座商店街で、洋服や生活小物の店を営む外処友延さん(66)も消費増税への対応に苦慮している一人だ。商品の一部に菓子類や飲料品など食品がある。「売り上げでみれば1%に満たない。対策の手間を考えれば、扱いをやめようかと。でもこれまでのお付き合いもあるし…」。売り上げへの影響も心配する。「ファッションは余裕があっての商品。今回は駆け込み需要も期待できない」と話す。

 外処さんは「最近の『年金二千万円問題』で老後や将来への不安は、ますます重くのしかかる。将来不安があればみんな消費しないですよ」と嘆く。その上で「税制と年金は違う問題かもしれないけど、まず老後の安心や社会保障の制度をきちんと議論して再構築しないと不安は解消しない。消費も回復しないですよ」と憤った。

◆県内企業「半年間マイナス」74%

 民間の調査機関の調査では、県内企業や事業者の懸念や混乱が浮き彫りになっている。

 群馬銀行系のシンクタンク「群馬経済研究所」が県内2000社を対象に4月に行ったアンケートでは、回答のあった590社のうち、売り上げへの影響について増税後の半年間に「マイナス」の影響があると答えた企業は74.6%に達した。マイナスは全業種に及んだが、特に小売業は91.3%にも上った。

 税率引き上げへのレジなど会計面の準備状況は「できていない」が68.8%、食品などが対象の軽減税率への対応も「できていない」が75.5%を占めた。

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