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群馬

72年ぶりに新人同士の争い 各陣営 選挙戦の状況は

2019年7月17日 紙面から

 二十一日の投開票日まで四日と迫った参院選。群馬選挙区(改選数一)の新人三候補も訴えに熱がこもる。同選挙区での新人同士の争いは、補選を除くと一九四七年以来七十二年ぶり。自民党新人で元県議の清水真人さん(44)=公明推薦=と、「野党共闘」態勢で挑む立憲民主党新人で元大学准教授の斉藤敦子さん(51)=社民推薦、国民支持=の主な二陣営の状況を中心に取材した。

 清水さんの陣営では自公の連携を軸に組織戦を展開する。衆院選の県内五小選挙区で議席を独占する自民の厚い支持層、組織票を固める戦略だ。建設業や農林業、商工業など幅広い業界団体や企業の支援を受け、陣営幹部は「約八百の団体から推薦を受けた」と意気込む。

 陣営が懸念するのは清水さんの知名度。高崎市議と県議(同市区)を各二期務めたが、参院選は全県一区。出馬が決まったのも今年一月下旬と遅かった。当時参院議員だった山本一太さんが昨年十二月に知事選へのくら替えを表明。これを受けて急きょ、公募による選考で決定した。

 山本さんの知事選くら替えには自民県連内に批判もあり、知事選と参院選との連携態勢が決まったのはさらに遅い五月末、山本さんが自民の推薦を受けてからだった。

 参院議員時代の知名度がある山本さんとの連携で名前の浸透を模索したが、選挙戦で二人が並んだのはわずか一度。今月七日、前橋市の山本さんの選挙事務所であった地区決起大会だけだ。藤岡市鬼石地区で十一日にあった街頭演説では山本さんが選挙カーで移動後、清水さんが登場して支持を訴えたが、顔を合わせる場面はなかった。

 選対本部長の星名建市県議は「山本、清水両陣営の運動のスタイルが違うので一緒になる機会が少ないだけ。県連は一枚岩だ」と強調する。だが県議の一部からは山本陣営に「急に大会や街頭演説をやることになって人集めを依頼されることもある。参院選の運動で動員しており、支持者もこちらも疲弊する。一緒に行うか、最初から予定していれば…」と困惑の声も。知事選を巡る混乱が連携態勢の遅れとして影を落とす。

 十六日からは各地域で総決起大会を開き、組織固めと盛り上げを図る。(石井宏昌)

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 斉藤さんは、立民、国民、共産、社民、新社会の各党県組織が共闘し、「野党統一」候補として選挙戦に臨んでいる。改憲阻止や年金問題など与党候補との対決姿勢を鮮明にした選挙戦を展開。各野党の幹部も次々と応援に入り、知名度向上と政策の浸透を図っている。

 公示日の四日には、立民の長妻昭代表代行が前橋市に入って演説。「相手候補の背中が見えるからやって来た」と話す。共産の塩川鉄也衆院議員も県庁前で応援した。

 七日には、立民の枝野幸男代表が高崎駅前で千人(陣営発表)の聴衆を前にマイクを握った。枝野代表は斉藤さんを「発信力があり、芯もしっかりしている候補だ」と評価した。群馬に入った理由について「勝てる可能性があるところ、厳しいけれど、追いつけ追い越せるところに集中的に行っている」と話す。

 立民の辻元清美副代表は十日に館林市、社民の福島瑞穂副党首は十一日に高崎駅前でそれぞれ演説した。

 選挙戦最後の日曜日になった十四日も、斉藤さんは高崎駅前で野党各党の幹部たちと支持者や買い物客に向けて声を張り上げた。

 「野党統一」の陣営だが、その野党の応援団でもある労働組織「連合群馬」からは当惑の声も一部で上がっている。歴史的に連合は共産と対立関係にあるためだ。連合の幹部は「共産党に対してアレルギーのある組合もある」と明かし、「投票に行ってほしい、と訴えるしかない」と話す。

 斉藤さんの陣営幹部は「共産党には組織力と地力がある。連合とも何とかまとまっていければ」と総力戦で乗り切りたい考えだ。

 終盤では、人口の多い都市部を重点に回り、集会を開くほか、無党派層や女性らの取り込みを図り、支持拡大を目指していく方針だ。(池田知之)

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 このほか、政治団体「NHKから国民を守る党」の前田みか子さん(47)は介護の仕事をしながら選挙運動を続ける。会員制交流サイト(SNS)などで、NHKの受信料制度の批判やN国への支持を呼び掛ける。

 演説は週末のわずかな機会を利用する。七日に前橋市と高崎市で街頭でマイクを握り、十三日には太田市内で演説し、街角の有権者に支持を訴えた。

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