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神奈川

主な候補者に聞く(上)

2019年7月9日 紙面から

 参院選神奈川選挙区(改選数四)では二十一日の投開票に向け、十四人が舌戦を繰り広げている。消費増税や改憲といった全国的な争点に加え、県内には人口の偏在、カジノ誘致の是非、在日米軍施設の負担、ヘイトスピーチなどの問題もある。主要九候補に実施したアンケートの結果を二回に分けて紹介する。 (参院選取材班)

(届け出順)

<問1> 県内の都市部と周辺部の人口・経済格差をどのように解決しますか

<問2> カジノを含む統合型リゾート(IR)施設誘致の賛否と、国が整備基本方針の公表を延期したことへの見解を述べてください

<問3> 県内の在日米軍施設による負担の軽減について、どのように取り組みますか

◆乃木涼介(のぎ・りょうすけ)さん(54) 国民・新

<問1> 原因の一つに東京一極集中型のスキームが存在することが挙げられるので、これをいかに地方へと分散をしていくかがキーとなると考えます。在宅勤務のできる環境を増やしそこに居続けることができるような施策、保育施設の拡充などの対応が必要だと考えます。

<問2> 賛成

 ただし、時期尚早と考えます。ギャンブル依存症対策やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などのセーフティーネットが張られていない状況に加え、観光資源力としての効果算定もまだ明確に出ていない中でのIR誘致はまだするべきではないと考えます。

<問3> 基地交付金や調整交付金などで経済的に負担軽減を図るのと並行して、騒音対策や環境対策などにも目を向けなければなりません。日本側の管理権や自動車税率の問題が指摘される日米地位協定の改定に向けた議論も必要だと考えます。

◆佐々木(ささき)さやかさん(38) 公明・現<1>自

<問1> 自治体が実施する子育て環境の整備など若年世帯の転入増に向けた施策を、国として支援する仕組みを強化。また、地域に役立つ仕事を住民自らが起こし就労機会を創出する取り組みを推進する。SDGsを自治体経営の座標軸として取り組んでいくことも重要。

<問2> どちらとも言えない

 IRは横浜市の国際通商・観光都市としての魅力を高める推進力となると考えるが、治安の悪化やギャンブル依存症の増加に対する懸念が払拭(ふっしょく)されないまま、カジノを併設することは考えられない。カジノなきIRが成り立つのか否かも含め慎重に見極めたい。

<問3> 世界、とりわけ東アジアの安全保障環境を注視しつつ漸次返還・整理・縮小を求めていくべきだと考える。日米地位協定を改定することにより、米軍基地内の立ち入り権や地位協定の運用を協議する日米合同委員会の合意部分の開示など透明性向上も実現させたい。

◆相原倫子(あいはら・りんこ)さん(58) 社民・新

<問1> 過密化と過疎化にはそれぞれ固有の理由があり同時解決は困難。過疎化には、補助金などを有効に使って人口減を地道に抑える政策を実施する。過密化には、単に人口を減らす方策だけでなく、過密の弊害を除去しつつ集積の経済を享受できる環境づくりが必要。

<問2> 反対

 政府がいくら観光や経済振興でIRを宣伝しようとしても博打(ばくち)に変わりはない。ギャンブル依存を悪化させ、反社会勢力の資金源化やマネーロンダリングの恐れを排除できない。巨額の投資話も、それを上回る博打の収益が見込まれるからで結局ツケを払うのは国民。

<問3> 労組・市民団体と連帯して厚木基地爆音訴訟を支援し、相模原補給廠(しょう)への第38防空砲兵旅団司令部の移設撤回を求め、ミサイル防衛に伴う機能増強に反対します。横須賀を母港とする原子力空母やイージス艦の配備撤回を求めます。地位協定の全面改正も必要。

◆壱岐愛子(いき・あいこ)さん(33) 幸福・新

<問1> この問題については、交通革命を起こすことで、都心などで仕事を行う上での利便性を向上させ、現在過疎化している地域のベッドタウンとしての利便性を向上させるとともに、人口増に伴う商業、働き口の活性化も同時に目指していきたいと思います。

<問2> 反対

 基本的には反対です。カジノを含む統合型リゾートを誘致した場合、治安悪化の懸念があります。マフィアの温床になる可能性があるため、暮らしの安心を守る上でも反対します。基本方針の公表延期は選挙を考慮しての先送りとも取れるため、評価しません。

<問3> 在日米軍基地は、現在のように中国、北朝鮮による東アジアの軍事バランスが崩れてきている状況では、安全保障上、重要になると思います。縮小させることが負担軽減になるとは言えず、それによって国防が落ちるのであれば、元も子もないと言えます。

◆牧山弘恵(まきやま・ひろえ)さん(54) 立民・現<2>

<問1> 地域の自主性を高め、地域ごとの創意工夫が地域の活性化につながるよう、環境整備を行う。「ヒト・モノ・カネ」の東京一極集中から脱し、「補完性の原理」と「近接性の原理」を重視した地域主権型社会を構築する。

<問2> 反対

 カジノについては、依存症問題などへの懸念が払拭(ふっしょく)されておらず、そもそも反対。風紀に対する悪影響も懸念され地元への誘致を阻止しようとするのは当然。

<問3> 沖縄に次ぐ基地県であるという現状を踏まえ、県内の在日米軍基地負担の軽減は喫緊の課題。具体的には、日米地位協定の改定に全力で取り組む。

◆林大祐(はやし・だいすけ)さん(43) N国・新

<問1> 回答は全て私見。本件は全国で発生。過密地域には仕事も生活の利便性もあり、過疎地域は逆。人口偏在解消は困難。過疎地域住民は不便を承知して住み続けるか移住促進。各地域ごとに事情が異なるため地方自治体からの要望をくんで個別検討。

<問2> どちらとも言えない

 IR誘致には長所短所がある。「誘致場所近隣住人」を定義し、決定前に説明の上アンケートなどで民意を問うべきだ。小職が近隣住民であれば反対。結局中身はギャンブル場。経済効果は限定的、短所顕著と予想。再評価する意味もあるため基本方針延期は良策。

<問3> 自衛のための最低限の備え、自衛隊のみを有する日本にとり米軍施設は国防上不可欠。具体的に施設が存在することで近隣住民がこうむる事例を列挙し個別に対処。騒音問題は防音対策に補助金を拡充。基地軍人らによる犯罪被害は米軍に綱紀粛正を求めるほかない。

◆島村大(しまむら・だい)さん(58) 自民・現<1>

<問1> 子育てにかかる経済的負担を軽減し、子育て世代を支援する。活躍の場を地方に求める人材と、地方の求人のマッチングを進め、都市部から地方への人の流れをつくる。住環境や子育て支援などで各自治体・地域の企業・大学などが協力し、定住促進を図る。

<問2> どちらとも言えない

 IRを横浜市に誘致することで、訪日外国人客の増加や経済効果など地域振興が期待される一方で、ギャンブル依存症や治安への影響などさまざまな懸念もあることから、十分な検討が必要。基本方針についても十分な検討がされた上で公表されるべきだと考える。

<問3> 日米安保体制の抑止力を維持しつつ、施設・区域の整理統合や、各種訓練の移転など在日米軍再編を着実に進めるとともに、生活環境整備のための防音工事や民生安定施設などへの助成などの周辺地域との調和を図る施策を推進する。

◆浅賀由香(あさか・ゆか)さん(39) 共産・新

<問1> 武蔵小杉の相次ぐ高層マンション建設など無計画的な街づくりの是正、教育・子育て環境の整備、乗客過密駅の改善、ビル風対策・住環境整備などの住みよい街づくり、また人口減少地域では農業・水産業や観光業などを含む地域産業の振興策が重要と考えます。

<問2> 反対

 カジノは刑法で禁じる賭博であり、人や家族、社会を壊すギャンブル依存症の拡大は避けられません。地域経済の活性化どころか海外のカジノ事業者による日本人資産の海外流出も懸念されます。

<問3> 県民運動や沖縄の新基地反対の運動と連帯して、厚木基地の離着陸訓練とオスプレイ飛来の中止など基地被害の軽減、米空母の横須賀母港返上など基地縮小を求めます。また、異常な特権を米軍に与えている日米地位協定の抜本改正を強く求めます。

◆松沢成文(まつざわ・しげふみ)さん(61) 維新・現<1>

<問1> 県内で過疎法に基づく過疎地域は真鶴町だけですが、人口減少が続く地域もあり、地域産業の活性化と子育て政策のさらなる充実が必要です。一方で、急激な人口増が進む地域では、行政サービスが破綻しないよう、都市計画によるコントロールが必要です。

<問2> 賛成

 外国人観光客の取り込みや地域活性化の核として、世界の都市間競争で勝ち抜くには有効と考える。条件として、パスポートの提示を義務化し入場に制限を設けるなどのギャンブル依存症への対策は必須であり、治安対策強化と併せて地元の理解と同意が必要です。

<問3> アジア太平洋地域の平和と繁栄を実現するには、日米同盟による米軍のプレゼンスは現状においては極めて重要です。しかし、周辺自治体や住民に大きな影響を与える問題については、解決方法を日米地位協定に明示するなど、日米地位協定の見直しが必要です。

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