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埼玉

1増が生んだ「無風」

2019年7月22日 紙面から

<解説> 与党と野党が二議席ずつを分け合った埼玉選挙区。改選数が三から四に増え、自民が「二人目の候補擁立」を見送った時点で、この結果は見えていた。

 自公は改選数三の時代と同様に手堅く「与党で二議席」を狙い、野党も第一党の立憲民主が「自公と補完勢力以外で二議席。そのうち一議席を取る」と掲げた。互いの議席はもはや、奪い合う対象ではなかった。

 焦点は野党間の議席争いに絞られた。全国の一人区では候補一本化も進んだが、埼玉では敵同士に。改選数増の恩恵は、最終的に前回次点だった共産が得た。

 午後八時の投票終了直後に四人が万歳。驚きはなく、全国的な勢力図への影響も限られる。与野党双方が一定の支持を実感できた「無風」の戦いだった。

 公約面では、消費増税の是非などの経済政策が争点になった。一方で憲法についての論戦は乏しく、自民候補も改憲を強く訴えなかった。安倍晋三首相が改憲に前のめりな中で、有権者に十分な判断材料が示されなかったのは残念だ。

 県内政局の視点で見れば、今回の参院選は八月の知事選、十月に予想される参院補選へと続く流れの中にある。今後につながる本当の戦果を挙げたのはどこなのか。「選挙イヤー」が終わった時に、初めて見えてくるものもあるだろう。 (井上峻輔)

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