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<くらしデモクラシー>安保法成立もうすぐ4年 民主主義って

2019年6月22日 朝刊

 「民主主義ってなんだ?」。2015年の夏、安全保障関連法の制定を阻止しようと、国会前に集まった市民たちの問い掛けが響いた。あれから4年。今夏の参院選を前に、当時声を上げた元SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)メンバーの元山仁士郎(じんしろう)さん(27)と、安保関連法に反対するママの会の発起人の西郷南海子(みなこ)さん(31)にあらためて聞いてみた。民主主義って−。 (荘加卓嗣)

◆シールズ・元山さん「反対意見の人とも対話」

シールズ・元山さん

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 「香港頑張れ!」。今月十三日夜、渋谷ハチ公前で若者たちが口々に叫んだ。「逃亡犯条例」改正案の撤回を求め、大規模デモが続く香港の人々を応援しようとツイッターで呼び掛けた元山さんにSEALDsの元メンバーたちが呼応。二千五百人(主催者発表)が結集した。

 「民主主義を標榜(ひょうぼう)しているのに、『一部の人』が十分な議論と理解のないままに決定してしまっていいのか」。今もなお地域の重要な決定に参加できない故郷・沖縄と重なり、声を上げずにはいられなかった。

 SEALDsの前身で一三年の特定秘密保護法制定に抗議したSASPLからデモに加わってきた。安保法案の審議がヤマ場に入った一五年八月末には十二万人(主催者発表)が国会を取り囲んで反対したが、法案は可決された。SEALDsは解散したが、元山さんは沖縄で仲間たちと「シールズ琉球」の活動を続け、地元県政も巻き込み、今年二月には米軍の辺野古新基地建設を巡る県民投票を実現させた。

 県民投票では辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が七割超に上ったが、国は耳を貸さずに工事を進めている。「すごくむなしい思いもする」が、無意味だとは思わない。

 「政府が抗議活動を意識することで、安保法の運用も慎重になるはず。県民投票も反対が圧倒的多数だったという事実は残る」

 民主主義とは何か。元山さんの答えはシンプルだ。「みんなでよく話し合って決めること」

 県民投票を巡って、反対する保守系の集会に赴き対話も試みた。今年一月、全県実施を求めてハンガーストライキをする元山さんに、その保守系活動家がカイロを差し入れた。「衝突するのではなく、冷静に話をする姿勢が大事」。自らの実践からも、そう思う。

◆ママの会・西郷さん「生きていてもいいと思えること」

ママの会・西郷さん

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 安保法案が国会で審議中だった2015年7月、1人で「ママの会」をフェイスブックで立ち上げた。「だれの子どももころさせない」が合言葉。当時1〜7歳の3人の子どもを京都の自宅に残し毎週のように東京へ赴きデモに参加した。

 「政権への怒りが全開だった」という4年前。でも今は「生活が追い詰められ、これ以上悪くならなければという切実な思いがあるのでは」と、消去法で政権を支持する人々の気持ちも見えてきたという。

 東京電力の福島第一原発事故で「安全と言いながら、国はうそをつく」との思いを深め、脱原発をきっかけに反安保法の運動に取り組んできた。この4年間の国政選挙の結果には「悔しいし、力不足を感じる」と話すが、ママの会の活動は続いている。だが、その内容は安保法にとどまらず、より地域の生活に根ざしたものにシフトした。

 近年は欧州の労働者たちが提唱する「反緊縮」の経済政策に共感。消費税増税に反対し、社会保障などへの財政出動を求める市民運動「薔薇(ばら)マークキャンペーン」の呼び掛け人の一人に連なる。暮らしに根ざした現実的な呼び掛けが、民主主義を立て直すことにつながるという。「本当に政治に無関心な人はいない。そこを信じる」

 西郷さんにとって民主主義とは「一人一人がここにいてもいいんだ、生きていてもいいんだと思えること」。その真意を重ねて問うと「1票に力があるんだという実感がなければ参加しようという気持ちになれない。自殺率も高く生の尊厳さえも脅かされている。今の日本はそこすらも危うい」と憂えた。

 ◆シリーズ「くらしデモクラシー」へのご意見、情報を募集します。メールはshakai@tokyo-np.co.jp ファクスは03(3595)6919、郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「くらしデモクラシー」取材班へ。

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