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<くらしデモクラシー>有権者に聞く「民主主義とは」 「民意反映」実感乏しく

2019年7月1日 紙面から

 「選挙は民主主義における最大の論戦の場」「民主主義の原点である選挙」−。安倍晋三首相がそう連呼したのは、2年前の衆院選。「民意」は安倍政権を選択したが、この2年、政権が数にまかせて押し通した重要法案には、水道の民営化を認める改正法や、生煮え議論の入管難民法改正など、国民に異論が多いものも。この現状を有権者はどう見ているのか、参院選を前に問い掛けてみた。「民主主義って何だと思いますか?」

  (小倉貞俊、神野光伸)

 「国難突破解散」をうたった二〇一七年十月の衆院選。安倍首相は選挙前の記者会見で「民主主義」を繰り返し、解散の大義を強調した。「税こそまさに民主主義。国民の信を問う」「民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅しで左右されてはならない」など、普段の演説ではほぼ使わない「民主主義」という単語が、一回の会見で五回登場。「森友・加計問題」の国会審議をしないままの解散に、疑惑隠しとの批判が高まっていた時だった。

 選挙で勝利した後の安倍政権下では、官僚の忖度(そんたく)による公文書偽造や破棄などの問題が噴出。野党は「民主主義の危機」を叫ぶ。

 与野党でかみ合わない「民主主義」という言葉。有権者はどんなイメージを持っているのか。東京・渋谷駅前で都内の会社員男性(26)は「平和とか平等、ですかね」。アルバイトの女性(23)は「世の中がうまくいっている、というイメージ」と答えた。

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」でつながるフォロワーにも同様に投げかけてみると、老若男女から「民の暮らしをよくするための政治」「単なる多数決にとどまらない、少数意見の尊重」「何でもみんなで話し合って決める」などの返答が寄せられた。

 「日本で民主主義は機能していると思うか」も尋ねたところ、二十代女性が「日常生活に問題ないから、機能している」と回答したものの、実名で回答したほぼ全員が「機能していない」「ほぼ機能していない」とした。その理由として、沖縄県民の「民意」に反して、名護市辺野古(へのこ)への米軍新基地建設を進める国の姿勢を挙げる人が多かった。

 千葉県市川市の主婦井上英子さん(56)は「『普通が一番』というのが母の口癖で、周りと同じにしていれば、それが一番幸せと教育されてきました。周りや世の中の空気に乗るだけの人が多ければ、民主主義が機能するのは難しいのではないかと思います」とした。

 民主主義が「機能不全」に見えるのはなぜか。専修大の岡田憲治教授(政治学)は「前回衆院選では与党が大勝したものの、得票率では五割を切っていた。小選挙区制の多数決システムへの違和感もあり、『民意が反映されていない』との思いを多くが募らせている」と指摘する。

 岡田氏は「民主主義とは多数決のことではなく、共同体を運営する一手段」と説明し、有権者として参加することの重要性を説く。「民主主義は、間違えることを前提にするシステム。自らの判断ミスを踏まえて協力し、未来をつくっていく当事者意識が大切だ」

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