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「電力」候補、議席に危機感 再稼働推進・脱原発をけん制

2019年7月3日 朝刊

連合の産別候補10人のポスター。電力総連の浜野喜史氏ら5人は国民民主党、他の5人は立憲民主党の比例代表で立候補する=東京都千代田区の連合会館で

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 参院選(四日公示、二十一日投開票)で、原発再稼働を掲げる大手電力会社の労働組合の全国組織「電力総連」が擁立する候補者が厳しい選挙戦に直面している。これまで民主党・民進党の比例代表で上位当選してきたが、今回は支持率が伸び悩む国民民主党の公認となり一転当落線上に。各電力労組からは「党勢が上向かなければどうにもならない」と悲鳴が上がる。 (宮尾幹成)

 今年三月十九日、東京・霞が関の経済産業省で、電力総連の岸本薫会長が世耕弘成経産相に、原発再稼働を着実に進めるよう求める要請書を手渡した。その場には電力総連出身の小林正夫(東京電力労組)、浜野喜史(よしふみ)(関西電力労組)両参院議員が同席していた。浜野氏は今回改選を迎える一人だ。

 ちょうどこの時期は、二議員が所属する国民民主が立憲民主党や共産党との野党共闘をにらみ、公約に「原発ゼロ」を盛り込む方向で調整のさなかだった。

 電力総連は一九五九年の参院選で関電出身候補を当選させて以来、ほぼ一貫して国会に代表を送っている。二〇一一年の東電福島第一原発事故後は、民主党・民進党を急激な「原発ゼロ」政策に進ませない壁として立ちはだかってきた。

 しかし、一七年の民進分裂を機に状況が一変。民主・民進最大の支持母体だった日本労働組合総連合会(連合)に加盟する産業別労組(産別)も、支持政党が分裂状態となった。今回の産別出身候補は、立憲民主、国民民主両党の比例に五人ずつ出馬する。

 ただ国民民主には勢いがなく、五人全員の当選は厳しい。電力総連関係者は「産別ごとの順位争いだったのが、座布団(議席)の取り合いだ」とこぼす。カギは、比例票の七割程度を占める「政党名」でどれだけ得票できるかだ。

 一六年の参院選で民進党の政党名得票は約八百七十五万票。六月下旬の共同通信の世論調査では、比例の投票先は国民民主が1・6%、立憲民主が9・0%。この比率で単純計算すると、国民民主は百三十万票程度で、今回見込まれる個人名得票と合わせても最大で二百万票台にとどまる。一議席獲得の目安は百万票とされ、一人か二人しか当選できない情勢だ。

 電力総連出身者の議席が減れば、野党の脱原発志向をけん制する力が弱まるのは必至。「守りつないできた伝統を守りきれるのかどうか、極めて厳しい状況」。浜野氏が自身のウェブサイトに記すように、関係者の危機感は強まっている。北陸電力労組の六十代の元幹部は「今回は組合からOB・OG同士の働き掛けを強めるよう言われている」、中部電力労組出身の日比雄将(ひびたけまさ)愛知県議も「電力関係以外の親しい支援者にも『比例は浜野』とお願いしている」と明かした。

<参院選の比例代表> 政党や政治団体が候補者名簿を提出し、有権者は候補者の個人名か政党・団体名で投票。個人票と政党・団体票の合計に基づき各党・団体に議席を割り振り、個人票の多い順に当選者を決める「非拘束名簿式」で行われる。今回から、特定候補が個人票によらず優先的に当選できる「特定枠」が導入されるが、利用するかは各党・団体に委ねられている。

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