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雨の中、未来見極め

2019年7月4日 紙面から

 参院選が四日、公示された。改憲の是非や、老後の支えとして信頼が揺らぐ年金制度、外交、原発・エネルギー問題…。有権者は、山積する課題をどう考え、政治に何を求めているのか。梅雨空に覆われ、時折、雨脚が強まる中、候補者が政策を訴える東京都内の街頭などで聞いた。 =<1>面参照

◆憲法 9条巡り割れる意見

 安倍晋三首相は、改憲し二〇二〇年の施行を目指すとする。有権者の意見は分かれた。

 東京都北区の無職伊藤いつこさん(82)は「自衛隊は明らかに軍隊、戦力なので、実態に即して九条を変えた方がいい」とする。一方で「再び戦争をする国に変えるのと話は別。国民が注意深く見ていく必要はある」と話した。

 新宿区の会社員戸田雅人(まさと)さん(55)は「米国と共に世界各地で安全保障政策を展開するのではなく、あくまでも自国の領土・領海・領空への攻撃にのみ、対処すべきだ。その範囲内で議論するのはありだと思う」。

 同区の主婦柿沢恵子さん(71)は「戦争になれば被害を受けるのは若い人」とし改憲に反対する。「以前は自民を支持していたので、自民が憲法を変えようとしているのは悲しい。野党が数を増やして首相の意見を封じてほしい」と願った。

◆くらし・年金 税の使い道見直して

 十月予定の消費税増税と、老後は二千万円不足とされた年金問題。暮らしへの不安の声が相次いだ。

 JR新宿駅前に野党候補の演説を聞きに来た東京都板橋区の元保育士渡辺久美さん(67)は「六十九歳の兄を介護しているが、年金と介護保険が不安。税金が正しく使われているか、使い道を見直してほしい。暮らしを変える期待をさせてくれる政党を応援する」と話した。

 新宿区の自営業稲垣秀幸さん(75)は「アベノミクスも初めは景気底上げの効果があったかもしれないが、今は感じない。暮らしは苦しくなり、さらに消費税が上がれば生活できないのでは」。

 与党候補の演説を聞きに来た千葉県船橋市の団体ボランティア三木昇さん(70)は「アベノミクスで潤っているのは富裕層だけでは。年金の支給額も減るだろう」とため息をついた。

◆外交・防衛 米追随は国益損なう

 外交・防衛問題では、政府の姿勢や膨らむ防衛費への疑問の声が上がった。

 通勤途中に与党候補の演説会場前を通り掛かった東京都練馬区の会社員平田かおるさん(43)は「米国のトランプ大統領が最近、日米安全保障条約への不満を語っている。米国に追随し過ぎて日本の国益が損なわれないよう、言うべきことは言ってほしい」と話した。

 野党候補の演説会場にいた町田市の無職田中誠さん(85)は「安倍政権は、再選を目指すトランプ大統領の言いなりで武器を買わされている。防衛費にそんなに使う金があるなら、福祉に回すべきだ。外交も中国や韓国との関係をもっと改善してほしい」と話した。

 北区の無職貝瀬啓二さん(69)は「軍事力増強は、日本人拉致問題などを強引に解決する下準備にしか見えない。それより教育や少子化対策など子どもの未来を考えて」と話した。

◆原発・エネルギー 再生エネ推進は可能

 東京電力福島第一原発事故から八年が過ぎ、国は原発の再稼働を進める。

 「原発をゼロにすることは国家戦略上問題だ」。東京都中央区であった与党候補の出陣式に駆け付けた立川市の自営業上野時雄さん(69)は強調した。「原子力技術の衰退は国力の低下につながる。原発は限定的な活用が良い」

 一方、JR新宿駅前で野党候補者の演説に耳を傾けていた葛飾区の無職進藤一俊さん(72)は「日本は活断層が多く、地震がいつ起きてもおかしくない」と危険性を指摘。「次世代のためにも原発は全てなくし、再生可能エネルギーの道を進むべきだ」と訴えた。

 埼玉県所沢市のアルバイト鈴木寿美子(すみこ)さん(65)は「原発廃止や再生可能エネルギー推進は政府がやる気になれば可能なはず。企業や電力会社とべったり癒着している安倍政権には失望している」と話した。

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