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“憲法” 安保 どうあれば

2019年7月5日 紙面から

参院選が公示され、街頭演説に集まった有権者ら=4日、東京・新宿で、本社ヘリ「あさづる」から

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 参院選の大きな争点の一つとなる改憲。自民党総裁の安倍晋三首相は九条への自衛隊明記などの案を掲げ、二〇二〇年の施行を目指す。集団的自衛権の一部行使を認めた安保法制、専守防衛を超えるような事実上の空母保有方針など、憲法の原則と実態が離れていく中の改憲論。有権者はどう受け止めているのか、各地で聞いた。  (原昌志、原尚子、荘加卓嗣、小倉貞俊)

 「安保法で自衛隊の活動範囲が広がったのに、さらに憲法に書き込むことで制限がなくなるのが心配」

 候補者が一斉に街へ繰り出す中、千葉大四年生の川尻岳宏さん(21)=千葉市=はこう話した。「僕らは戦争を知らない世代。防衛大に通う友人も戦地に行くつもりで通っているわけではない。(改憲で将来)彼らが行くことを考えると悲しい」。改憲で自衛隊が明記されれば「普通の軍隊」に近づく。集団的自衛権の行使により海外で戦闘に参加することも不安だ。

 千葉県流山市の看護専門学校生、宮田祐二さん(26)も戦地派遣を懸念。「将来自分も看護師として後方支援に行くのでは。ただでさえ人手不足の看護師が戦場で使われ、犠牲になれば社会的損失だ」と話した。

 戦争体験世代の豊島区の無職、小田明雄さん(82)も改憲に反対。「投票の基準は、憲法が最重要。安倍首相は人の話を聞かない」と危惧した。戦時中は疎開経験があり、改憲の動きには「戦争を知っている世代が少なくなったからかもしれない。日本は軍備を増強するのではなく、平和に徹するのが一番」と語った。

 一方、積極的に改憲を支持するのは、千代田区の靖国神社に参拝に訪れた前橋市の会社員鈴木直子さん(59)。「中国の動きが心配。自国を守るには自衛軍は必要でしょう。自衛隊明記だけの自民改憲案には不満だけど、とりあえずは少しずつ」。トランプ米大統領が日米安保体制に不満を漏らし、日本にさらに負担を求める発言には「そう言われても仕方がない」と苦笑した。大阪府四條畷市の会社員谷口昭彦さん(55)も「九条改憲は当然。軍として位置付けるべきだ。まずは一歩」と受け止めていた。

 明確に賛否どちらとは言い難い人も。多くの人が行き交う上野駅前で、世田谷区の自営業広部岳彦さん(42)は「理性では(自衛隊明記の)改憲に賛成」としつつ、思いは複雑な様子だ。戦前に軍部が「(天皇の)統帥権の独立」を拡大解釈し、なし崩しに戦争に突き進んだことを引き合いに、「憲法に明記されていない自衛隊をそのまま放置したり、合憲とみなしたりする現状は疑問。法が拡大解釈されることほど怖いものはない」と指摘。同時に「感情的には、(軍備増強への)抑止力が一つなくなるとの不安もある」とも。

 「憲法はきれいごとにとどまらず、内実の伴ったものであってほしい。政治や社会の情勢で解釈が変わるようなことが起きないためにも、自衛隊を明記した方が良いのでは」と言うのは、川崎市の日本語教師仁野(にの)玲菜さん(41)。ただ、まだ結論は出ていない。「集団的自衛権が行使できるようになったことで、他国の軍事行動に巻き込まれる恐れはぬぐえない。各党の主張をしっかり吟味していきたい」と言葉を選んだ。

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