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ニセコ 外国人増、探る共生の道 「政治家は考えて」

2019年7月5日 紙面から

アウトドア用品店の同僚と話すオーストラリア人のジャイ・トムキンソンさん(右)=北海道倶知安町で

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 国際的なスキーリゾートとして人気の北海道ニセコ地区で、増加する外国人への住民の不満が行政に多く寄せられ、自治体側が対応を迫られている。倶知安(くっちゃん)町では冬季に人口の一割強を占め、地元住民との摩擦もあり、共生の模索が続く。外国人からは参院選を迎え「暮らしやすくしてほしい」と求める声も上がる。

 「増えすぎて住みづらい」「(ごみや交通の)マナーが悪い」。二〇一七年、倶知安町が町民二千人に実施したアンケートでは、増加する外国人への不満が並んだ。

 リゾート地のため季節で変動するが、同町の冬季の外国人住民数は一四年以降、過去最高を更新し続け、今年一月末で人口の約12%の二千四十八人。町は英語表記の案内文でごみ分別を説明するなどしているが、周知が行き届かないのが実態だ。

 同町のアウトドア用品店で働くオーストラリア人のジャイ・トムキンソンさん(39)は「ごみ分別は故郷では二種類しかなく難しい。銀行や郵便局も日本語表記の書類が多く大変だ」とこぼす。

 ニセコ町も今年一月、外国人が人口の約一割を占めた。同町で民泊業を営むオーストラリア人のジャスティン・パリーさん(49)は「昨年九月の北海道地震では、情報発信は日本語だけだった」と不安げに話す。日本語教室に通い、コミュニケーションを学ぶ。

 地震時には町内のコミュニティーラジオ局がライフラインや避難場所についての情報を発信したが、日本語だけだった。今年六月に英語が堪能な日本人を採用するなど、対応を進める。町には英語表記の防災マップもなく、町総務課の北野雅樹防災係長は「外国人への情報発信には課題がある。SNS(会員制交流サイト)での多言語発信も検討したい」と話す。

 東に約百四十キロ離れた占冠(しむかっぷ)村は今年一月末、外国人が人口の約28%を占めた。だが外国人はホテルがあるエリアをあまり出ず、交流は乏しい。村内のホテルで働くネパール人、マハビル・グルンさん(37)は「会社の日本人とは話すが地元住民と関わりはない」と明かす。村の担当者は「日本人と関わりがないのは仕方ない」と諦め顔だ。

 今年四月には外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が施行。今後、移住者のさらなる増加が見込まれる。ニセコ町の国際交流員で米国人のミッチェル・ラングさん(26)は「私に選挙権はないが、共生についても政治家は考えてほしい」と訴えた。

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