野党は「核の傘」に対抗軸を 核禁条約採択から2年 ICAN川崎氏に聞く
2019年7月7日 朝刊
「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲(あきら)国際運営委員=写真=は、核兵器禁止条約の国連採択から七日で二年を迎えるにあたり、本紙のインタビューに応じた。参院選(二十一日投開票)の公約で、核廃絶に言及した主要政党が三党にとどまったことに懸念を表明。米国の「核の傘」で日本を守る伝統的な安全保障政策を見直し、対抗軸を示すよう野党に求めた。 (大杉はるか)
−各党公約をどうみる。
「核廃絶を掲げる政党が少ない。立憲民主党や国民民主党も、この問題で対抗軸を打ち出せていない。多国間主義、国連中心で軍縮を重視する政治的な対抗勢力がない。核廃絶への議員の立場をネット上でチェックできる『議員ウオッチ』を始めたが、賛同率は13%。核軍縮・廃絶という世界規模問題に関心が低い」
−なぜ関心が低い。
「日本の安全は米国頼みという発想がしみついている。政府は米国の核兵器が日本のために不可欠だと考え、米国に『見捨てられない』ために対米協力を拡大してきた。安保法制しかり、トランプ大統領への接待外交しかりだ。核の被害国として核軍縮による安全をめざすという発想が出てこないのは残念だ」
−トランプ氏は日米安保条約は不公平だと不満を示している。
「守ってほしいならもっと金や兵を出せと言っている。つまり米国は自動的に日本を守るわけではない。実際、日米安保は岐路に立っている。今日の安保条約は朝鮮半島の緊張を前提に締結されたが、米朝首脳会談を通じ、朝鮮戦争終結が現実味を帯びてきた。新しい安保ビジョンが必要だ」
−政権交代しても、安保政策は大きく変えるべきではないという意見がある。
「例えば五月のオーストラリア総選挙で、野党労働党は核兵器禁止条約参加を掲げて戦った。日本でも核抑止力に頼らない安保のあり方を野党は示すべきだ。ほとんどの政治家の頭の中は冷戦時代のままだ」
−核抑止力では安全は確保できないのか。
「兵器に人工知能(AI)技術が組み込まれ、ツイッターで国際政治が動く時代だ。核兵器が誤発射される危険性も高まっている。万が一、使用された場合の防護態勢もない。こちらが持てばあちらもとなり、核拡散につながる。今日、核抑止力というのは安全神話だ」