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10代投票率、今度は上げよう 18歳選挙権3年

2019年7月8日 朝刊

参院選立候補者らの街頭演説に耳を傾ける若者ら=7日、東京都新宿区で

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 参院選が公示され、初の日曜となった七日。候補者らの街頭演説を聞く市民の中に、真剣なまなざしの若者の姿もあった。選挙権が「十八歳以上」に引き下げられて三年。国政選挙での十代の投票率は、他の世代に比べて大きく低下している。なぜ下がったのか。このままで良いのか−。若者と、主権者教育の専門家に聞いた。 (松村裕子、梅野光春)

 「前の参院選では『投票なう』と友だちからツイッターでメッセージが相次いだんだけど…」

 若者の投票率向上を目指す学生団体「ivote(アイ・ヴォート)」副代表の大学四年別木萌果(べっきもえか)さん(21)=東京都杉並区=は三年前、十八歳になった時の参院選を振り返る。初めての投票に「意見表明できてうれしい。私たちの時代だ」と感じた。

 しかし今、高揚感はない。同世代から「選挙に行って意味があるのか」「投票しても変わらない」との声も聞く。

 友人の大学四年樋口悠太さん(21)=小平市=は三年前「初めてだから」と住民票のある山形市の実家に帰省し、投票した。「投票で世の中が変わったとも、生活につながっているとも感じない」。次の衆院選は投票しなかった。

 こうした停滞感を裏打ちするデータがある。二〇一六年参院選の十八、十九歳の投票率は46・78%だったが、一七年衆院選は40・49%。6・29ポイント下がり、下落幅は世代別で最大だった。全体の投票率は1・02ポイントの低下にとどまり、六十代では逆に上昇しただけに、十代の落ち込みが目立った。

 首都大学東京の林大介特任准教授(主権者教育)は「前回参院選は初の十八歳選挙権でマスコミが注目し、当事者の意識も高まった」と指摘。また「参院選は選挙日程を見通すことができ、学校は主権者教育のカリキュラムを組みやすいが、前回衆院選は突然の解散だった上、大学受験の準備に追われる十月の選挙。関心が低くなりがちだった」とみる。

 ならば、今回は投票率を巻き返す余地がある。別木さんは期待を込めて先月、若者と国会議員らの意見交換会を企画した。投票経験のない大学二年若林美南(みなみ)さん(20)=千葉県八千代市=は「国会議員と話したことで、政治家を近い存在に感じた。今度は行こうかな」と心境が変わった。

 政治家と触れ合って意識が変わるなら、候補者が街頭に出る選挙期間中は格好のチャンス。別木さんは「街角で候補者に声を掛けてみて」と提案する。

 慶応大SFC研究所の西野偉彦(たけひこ)上席所員(主権者教育)は若い有権者にこうアドバイスする。「一回の投票で政治が変わったと感じなくても、ずっと政治に関心を持ち続けてほしい。一つの法案が成立するのに何年もかかることがある。変化には時間が必要なのだから」

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