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遊説周知 首相「トラウマ」 やじに反論 批判浴びた過去

2019年7月10日 朝刊

安倍首相が応援演説を行った会場で掲げられた、政権批判のメッセージ(手前)と支持(奥)のメッセージ=7日、東京・JR中野駅前で

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 参院選での党首らによる遊説日程を巡り、各党の対応が分かれている。自民党の安倍晋三首相(党総裁)は二〇一七年の衆院選に続き、やじや妨害を警戒し直前まで非公表。過去にやじに反論した姿が繰り返し報道された「トラウマ」(周辺)が背景にありそうだ。野党は「支持基盤の見劣りをカバー」(幹部)しようと、数日前から周知を図り盛り上げを狙う。

 「安倍辞めろ」。七日、東京・JR中野駅前。首相が応援演説のため姿を現すと、「国難はオマエ」などと書かれたプラカードを手にした聴衆の一部からやじが起きた。演説後、首相は側近に「あの人たちも変わらないね」とこぼしたが、やじに反応しなかったことに周囲は「よく耐えてくれた」と安堵(あんど)した。

 首相には苦い記憶がある。一七年七月、東京都議選での演説時に「こんな人たちに負けるわけにいかない」とやじに反論した場面がテレビで繰り返し放映された。国会で野党の追及を受け「不徳の致すところだし大変残念だ」と釈明に追い込まれた経緯がある。同年十月の衆院選では一時、日程を非公表とした。

 今回の参院選も自民党幹部の日程は数日前に公表しているが、総裁日程は当日朝に報道機関に発表し、ホームページには掲載していない。

 聴衆を多く集めたい候補者側は悩ましい。中野駅前の演説も候補者陣営が新聞広告などで事前に周知。広告を見た首相側近は陣営を注意したが、反対派が集まる結果となった。首相が八日に訪れた岩手県では、候補者が事前にツイッターで遊説日程を掲載したが、混乱はなかった。

 一方、自民党を除く六党は前日までに党首らの日程を公表している。立憲民主党の枝野幸男代表は記者団に「誰に投票するか決めていない不特定多数の方に支持を呼び掛けるのが選挙だ。首相はそういう選挙をしようと思っていないのだろう」と語った。

 与党に比べ動員力が乏しいという野党の事情も見え隠れする。国民民主党が七日に秋葉原で開催した玉木雄一郎代表のトークイベントの聴衆は約二十人にとどまった。選対幹部は「民進党分裂で組織が小さくなり、早めに周知しないと人が集まらない」と打ち明ける。演説の妨害を受けたこともある共産党の小池晃書記局長は「首相は正面から政策を語り、審判を仰ぐ覚悟も自信もないのだろう。よほどやじが怖いのでは」と皮肉った。

◆「組織的な妨害ある」萩生田氏

 自民党の萩生田光一幹事長代行は九日、参院選で安倍晋三首相(党総裁)の遊説日程を党ホームページで事前に公表していない理由について「あらかじめ公表すると、組織的に演説を妨害する人もいて、まじめに演説を聴きたくて集まった人たちに迷惑をかける」と説明した。党本部で記者団の質問に答えた。

 萩生田氏は、七日に東京・JR中野駅前で行われた首相遊説について、自民党候補が事前に告知したため「そういう方たちが大挙してお見えになり、会場が混沌(こんとん)として『話が聞けない』という苦情もあった」と指摘。「(首相を)批判する権利はあるのだろうが、演説会は候補者の政策を聴いてもらうためにやっている。選挙妨害と思われるような行動は厳に慎んでほしい」とも話した。

 首相の公務日程が直前まで決まらないとも説明し、「残念だが、この(事前に公表しない)スタイルでしばらく続けてみたい」と理解を求めた。 (清水俊介)

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