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<くらしデモクラシー>首相「バブル期超え 最高税収」PRするけど… 主因は消費税 所得税は減収

2019年7月11日 朝刊

4日、参院選公示の第一声で「過去最高の税収」とPRする安倍首相=福島市で

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 安倍晋三首相が参院選の演説でアピールする「過去最高の税収」が話題だ。「経済を強くした」という実績を訴えているようだが、専門家からは「安倍政権下で消費税率を8%に上げたことを忘れているのか」といぶかる声が続出。過去最高の税収の実態はどうか。 (小倉貞俊)

 参院選公示日の四日、安倍首相は福島市で臨んだ第一声で「経済を強くしていけば税収だって増えるんですよ。税収は今年、過去最高になった」「あのバブル時代も超えたんです」と左手を広げて強調した。

 確かに、財務省が二日に発表した二〇一八年度の一般会計決算概要では、税収総額は六十兆三千五百六十四億円と、二十八年ぶりに過去最高を更新。ピークだったバブル期の一九九〇年度(六十兆一千五十九億円)を超えている。

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 これは「強い経済」によるものなのか。内訳を見てみると、消費税収入が増えた半面、所得税と法人税はむしろバブル期よりも減っていた。九〇年度と比べると一八年度の法人税と所得税は六兆円ずつ低く、低所得者ほど負担が多くなる消費税は十三兆円も増加。税収の構成比は、四割だった所得税収が三割にまで落ち、一割に満たなかった消費税収が三割を占めるまで膨らんだ。

 バブル期と違うのはそれぞれの税率だ。所得税は最高税率が九〇年の50%から45%に、法人税も37・5%から23・2%に引き下げられた。逆に3%だった消費税率は8%にまで引き上げられている。

 第二次安倍政権が発足した一二年度と比較すると、税収の伸び率は所得税が四割強、法人税が三割弱だが、一四年に5%から引き上げられた消費税は七割の増加となっている。税収増は消費税頼みの実態がある。

 実際、一日発表の企業短期経済観測調査(日銀短観)では、大企業・製造業の業況判断指数が二期連続で落ち込んでいる。同じく一日に内閣府が発表した、消費者心理を示す消費者態度指数は九カ月連続で悪化しており、個人消費も冷え込んでいる。厚生労働省の九日の発表では、実質賃金も五カ月連続で前年同月比を下回っている。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫さんは「統計不正をはじめ、安倍政権と関わる数値、データは根本的に問題が多い。数字自体は間違っていなくても、都合の良いところだけをPRする傾向がある」。安倍首相がこの選挙戦で、実質的な年金水準は減っているのに、本年度の年金支給額を0・1%増額させたと訴えているのも、その一つという。「そもそも消費税の増税は、不足する社会保障費に充てるのが本来の目的だったはず。それを『税収が増えた』などと自慢するならおかしな話だ」と話した。

 経済ジャーナリストの荻原博子さんも「大企業や富裕層が受ける減税の恩恵を、消費税が穴埋めしている。総所得が増えてはいるが、働かざるを得ない人が増えただけで、一人一人が豊かにはなっていない。安定して徴収できる消費税は不況にも強く、政権にとって都合がいい。『過去最高の税収』とは言葉のマジックにすぎない」と批判する。

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