• 東京新聞ウェブ

総合

<ともに>低所得者ら入居拒まぬ住宅、6割が大阪府に

2019年7月15日 紙面から

住宅政策を考える集会であいさつする稲葉剛氏(左奥)=6月12日、国会内で

写真

 低所得者や高齢者、障害者らの入居を拒まない「登録住宅」の約六割は大阪府内にある。公営の雇用促進住宅を民間企業が買い、登録住宅にしている。入居を断られがちな人たちの支援者は、登録を増やす工夫や公的関与を強める必要性を指摘する。

 七月一日現在、府内の登録住宅は五千四百十四戸で、約八割を「ビレッジハウス・マネジメント」(東京都港区)が運営・管理する。二〇一七年にソフトバンク系の米投資会社が取得した、全国の旧雇用促進住宅約十万五千戸の一部だ。

 同社コミュニケーション本部の平田陽一本部長は「自治体によって制度への姿勢に差がある」と指摘する。府は事業者と協議会をつくって手続きの入力代行などを行い、登録を手助けしている。政令市での最多登録は名古屋市で七百三十九戸。うち約九割を賃貸仲介業ニッショー(同市)が扱う。同社の高齢者見守りサービスへの加入が入居の前提だ。広報企画部担当者は「孤独死や認知症による火災の心配から、高齢者の入居拒否が多かった」と説明する。

 DV被害に遭った女性の住まい確保を支援するNPO法人「くにたち夢ファーム」(東京都国立市)の遠藤良子理事は、家賃滞納など家主の懸念にこたえる制度も必要だと指摘。「子どもがいる女性は就労が不安定とみなされ、なかなか家を貸してもらえない」と訴える。

 住宅問題相談などに応じている「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人の稲葉剛氏は「家主の善意に頼るのは限界がある。借り上げ型公営住宅のような仕組みが必要だ」と提案している。 (北條香子)

◆与野党 支援拡充前向き

 各党は低所得者らの住まい確保をどう考えるのか。参院選公約や政策を踏まえ、担当者に聞いた。

 自民は総合政策集で「新たな住宅セーフティネット制度に基づく施策を着実に推進する」と書いた。担当者は「要配慮者の入居を拒まない住宅の登録制度や入居支援などの施策を進める」と説明した。公明は公約に登録住宅改修補助や入居者への経済的支援を強化すると書いた。担当者は「登録を増やすてこ入れが必要だ。地域事情に配慮しながら制度の周知を図る」と語る。

 立憲民主は政策集に、低所得者や単身学生向け家賃補助創設を書いた。担当者は母子家庭などを対象に、保育機能や無料学習支援を受けられる子育て賃貸住宅整備も検討すると語る。国民民主は公約で年収五百万円以下世帯への月一万円の家賃補助を明記。担当者は「住環境の改善は子育て支援につながる」と話す。

 共産は参院選政策に「居住の権利」を基本にした住宅政策への転換を書いた。担当者は「賃貸人ではなく入居者に給付する家賃補助にするなど、制度拡充が急務だ」と指摘した。

 日本維新の会は公約などで低所得者らの住宅に直接触れていないが、同党は地盤の大阪府で家主の理解が進んでいるとした上で「公的賃貸住宅のストックも活用し、生活支援機能や福祉機能を導入する」と文書で回答した。社民は公約に総合的な住宅支援制度の創設や、公営住宅の供給拡大、家賃補助充実を盛り込んだ。担当者は「住宅を社会保障と位置付け、福祉と環境の視点から住宅政策を見直す」と説明した。

 政治団体「れいわ新選組」の山本太郎代表は「住まいは権利だということを全世代横断的にやっていく。公的住宅がもっと普及されるべきだ」と話した。

主な政党の公約

新聞購読のご案内