ラストサンデー、24時間アピール合戦 昼は対面 夜はネット
2019年7月15日 朝刊
参院選は、二十一日の投開票まで残り一週間。選挙戦最後の日曜日となった十四日、街頭では候補者らが雨に打たれながら政策を訴え、支持を求めた。一方、解禁から六年たったインターネット上の選挙運動も定着。候補者が動画を配信するなど、どこでも見られる特性を生かした有権者へのアピールは、二十四時間続いている。 (東京ニュース取材班)
◆街頭 握手次々「距離の近さいい」
雨が降りしきる十四日午前、東京都豊島区の巣鴨地蔵通り商店街を練り歩く新人の左手には白いタオルが握られていた。有権者と握手する前に、ぬれた自分の手を拭くためだ。暑さ対策に追われることが多かった過去の参院選と違い、今回は肌寒い選挙戦となったが、候補者の熱は高まっている。
大勢の人でにぎわう午後の新宿駅東口では、現職が街頭演説。有権者の質問にも答えた。続いて行き交う人波に飛び込むように駆け寄り、次々に握手。陣営は「この距離感の近さが街頭のいいところ。ネットでは人柄や雰囲気を伝えきれない」と話した。現職本人も「自分の訴えをしっかり受け止めてもらえたと思う」と手応えを感じていた。
品川区の大井町駅前では、別の現職が「皆さまの力で押し上げていただけるよう、お願いします」と聴衆に呼び掛けた。政策を訴えつつ「皆さん」を随所に織り交ぜ一体感を演出。選挙カーの上から陣営の一人が「勝つぞー」と声を上げると、「オー」と聴衆が応じ、コンサートさながらの掛け合いを見せた。
演説を聞いた同区の元会社員倉科善男さん(68)は「ネットで情報は入るが、選挙前には演説に行くことにしている。生の声を聞いて、顔を見たいから」と満足そうに話した。
◆動画配信「声が届く数 全く違う」
選挙カーの中で、スマートフォンを使ってSNSを更新する候補者 |
公選法の規定で、午後八時に街頭演説のマイクはオフになる。だが、候補者の動きは止まらない。
二〇一三年の公選法改正で、ネットを使った選挙が解禁された。公示・告示日から投票日の前日まで、ホームページ、無料通信アプリLINE(ライン)などの会員制交流サイト(SNS)を利用し、選挙運動ができるようになった。
毎日、午後十時すぎに投稿サイト「ユーチューブ」で動画をライブ配信する新人は「声を届けられる数が全く違う。ネットなら同時に二千人が見てくれるが、一人で街に立ってもそれだけは集まらない。それに夜の方が落ち着いて政策を聞いてもらえる」とメリットを話す。配信中に、視聴者からの質問にも答えている。
朝食の様子を連日、動画配信する新人も。十四日はホットドッグを頬張った。日常の一こまを切り取ることで有権者との距離を縮める作戦だ。党公認候補の応援で全国を飛び回る現職は演説の様子を動画配信。なかなか自分の選挙区に帰れないので、ネットがドラえもんの「どこでもドア」的な役割を果たしている。
ツイッターを一日に約三十回更新する新人は、十二時間で三十五キロを遊説して歩いたり、大盛りカップ焼きそばの完食に挑戦したりと、体を張ったオモシロ動画で選挙に関心が薄い若年層にアピールする。
一方で、この新人は「ネットとリアルの活動をどう結び付けるかが重要。どちらか一つでは駄目なんです」と話す。街頭活動を生中継したり、ツイッターなどで遊説予定を知らせたりする陣営は少なくない。