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<ともに>低所得者らを拒まぬ物件「登録住宅」 目標の5%止まり

2019年7月15日 朝刊

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 民間賃貸住宅の入居を断られやすい低所得者や高齢者、障害者らを拒まない「登録住宅」制度が、発足から一年半たっても、政府目標の5%程度の約九千戸にとどまっている。低所得者を受け入れた家主に家賃の一部を補助する仕組みも、本年度に予算化したのは全国で四十五自治体だけ。民間の空き家・空き室を活用して低所得者らの住まいの確保を目指す政策は、十分に機能していない。 (北條香子)

 国土交通省への取材で分かった。制度は二〇一七年十月施行の改正住宅セーフティネット法に基づく。賃貸人が低所得者ら「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない物件を都道府県などに登録し、行政側は配慮が必要な人に情報提供する。専用の住宅にすれば、国や自治体からバリアフリー化や防火・消火対策工事費の補助を受けることもできる。

 政府は登録住宅を年間五万戸程度増やし、二〇年度末までに十七万五千戸にする目標だ。だが七月一日現在の登録戸数は九千百十七戸で目標を大きく下回る。

 自治体が家主に家賃の一部を補助する制度を、昨年度利用したのは四十九戸。本紙調べでは、東京特別区と関東六県の県庁所在地、政令市計三十一のうち、本年度に補助費を予算化したのは世田谷、豊島、練馬、墨田各区と横浜市だけ。板橋区住宅政策課の清水三紀課長は「補助は数年で終わるものではない」と、財政的な事情から制度化に踏み切れないと説明する。

 制度が進まない背景には、周知不足に加え、家主の負担感があるとみられる。

 国交省は昨年、登録手続きを簡素化し、自治体に手数料撤廃を要請した。住宅総合整備課の担当者は「手数料がなくなればハードルが減り、大手事業者にも登録をお願いしやすい環境が整った」と、家主の負担を減らしたことでの登録増を見込む。

 東京都は今月九日、登録住宅に入居した高齢者の見守りサービス費の半額を支援するモデル事業を始めた。安否確認や孤独死の際の原状回復費を補償することで、家主の負担減を目指す。遠藤邦敏・安心居住推進担当課長によると「住宅セーフティネット制度」での自治体による見守りサービス補助は全国で初めて。

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