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<公約点検>(7)安保法 「実績拡大」「廃止」で対立

2019年7月17日 朝刊

 日米安全保障条約が定める米国の対日防衛義務にどう実効性を持たせるか−。

 六年半に及ぶ第二次安倍政権の最優先課題だ。二〇一五年成立の安保法はその中核を占める。憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を認め、憲法の基本原理である平和主義を揺るがした。安倍政権は安保法の運用実績を重ね、対する野党は廃止を訴える。この構図は今も続いている。

 トランプ大統領がぶちまけた「日本は米国を助けない」との不満は、以前から米政界や軍にくすぶっていた。安倍政権は安保法制定を急ぎ、日本も条件次第で米国を守れるようにした。見返りに米国の日本防衛を確実にする狙いだった。

 首相は参院選遊説で「助け合うことのできる同盟になった」と主張。民放番組出演では自衛隊が米軍防護の新任務を実施していることに触れ、安保法が同盟強化に寄与したと力説した。自民の公約は、安保法に基づく新任務を実施するために「態勢構築や能力向上を着実に進める」とした。

 公明は安保法の「適正な運用」を積み重ねると公約した。あえて「適正な」を付け、自民より慎重な姿勢をにじませた。日本維新の会は安保法を否定はせず、集団的自衛権行使の要件厳格化を提唱した。

 立憲民主、国民民主、共産、社民の四野党はそろって安保法廃止を公約し、共闘をアピールする。このうち、立民、共産、社民の三党は安保法について「立憲主義を逸脱」「違憲」と断じた。国民は憲法判断を示さず、やや距離を置いた。

 日米同盟に関しては、立民、国民が堅持、共産、社民が廃止・見直しと立場が分かれた。国民は自衛隊が海上保安庁の任務を補完する「領域警備法」の制定を唱え、野党四党では自衛隊の任務拡大に最も前向きな姿勢を示した。

 米国が中東・ホルムズ海峡などの海上を警備する有志連合の結成計画を表明したことを受け、自衛隊派遣の是非も論点に浮上した。政府・与党は現段階で派遣に言及していないが、野党からは軍事的な貢献に反対する声が出ている。

 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う名護市辺野古(へのこ)の新基地建設に関し、推進を明示したのは自民だけ。公明は賛否を示さなかった。建設に反対する県本部に配慮した。維新も是非に触れなかった。立民、国民、共産、社民は建設中止を打ち出した。

 政治団体「れいわ新選組」は安保法見直し・廃止を公約した。辺野古の新基地建設には反対を掲げた。 (上野実輝彦)

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