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障害者設備 当選なら改善? 重度者や介助者、議場入り前例なし

2019年7月18日 紙面から

委員会室のある参院分館の建物に設置されているスロープ=国会で

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 二十一日投開票の参院選には、自力で移動できない筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者や、聴覚障害者も立候補している。参院では、議会活動に介助の必要な重い障害のある議員がいたことはない。障害者団体などからは、当選すればバリアフリー化が進むはずみになるという期待や、「当選者の有無にかかわらず改善を」との声も上がっている。 (松村裕子)

 参院では、車いす対応では、スロープや多目的トイレを設置したり、エレベーターを追加したりしてバリアフリー化を進めてきた。

 参院事務局によると、衆参通じて初めて迎えた車いすの国会議員は、一九七七年の参院選で初当選した八代英太さん(82)。初登庁前に、階段にリフトが設置された。本会議場の議席は車いす利用者を想定しておらず、通路側の席の肘掛けを外して車いすから移れるようにした。

 今回の参院選に出たALS患者の候補は、手足が動かず、リクライニング式の車いすでの移動も介助が必要。声も出せず、文字盤を目で追って意思表示する。もし当選すれば、議場での採決で議席にある投票ボタンを自力で押すことはできない。

 聴覚障害のある議員への対応も、事務局は「経験がない」という。議場で質問や意見表明する方法も課題だ。

 担当者は「個別の候補者について仮定の話は控えるが、当選後に議員の意向を具体的に聞き、議院運営委員会でも協議して、最大限に配慮する」と話す。

 参院で三期、衆院も三期務めた八代さんは「参院で初当選して設備が改修されると、衆院もそれにならった。当事者が一人いただけで変わった。それが他の官公庁へ波及した」と振り返る。内閣府の二〇一八年版障害者白書によると、国民の7・4%が障害者とされる。八代さんは「今回の選挙でも障害者が当選すれば、健常者を前提としている社会に、さらに風穴をあけられる」と強調する。

 障害者の社会参加のため活動するDPI日本会議(千代田区)の佐藤聡事務局長は「多様な障害がある人が議員になり、どんな障害があっても議会活動できる設備とシステムが整うといい」と期待。さらに「障害者が当選しなくても、採決手段の工夫やスムーズに移動できる設備を考えてもらえたら」と付け加えた。

1977年、国会の階段に新設された車いす用リフトで移動する八代英太さん

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