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<論戦ファクトチェック>戦争放棄の9条 幣原提案の説も有力 自民が漫画でPR

2019年7月18日 朝刊

 自民党が、憲法九条に自衛隊を明記する党改憲案への理解を広めようと作った漫画の中で、今の憲法は連合国軍総司令部(GHQ)から押しつけられたように説明している部分がある。九条は幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)首相(当時、以下同じ)がマッカーサーGHQ最高司令官に提案して生まれたとの説も有力。漫画は一つの見方のみを示したといえる。 (安藤美由紀)

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 漫画は、六月に作成した「〜憲法のおはなし〜自衛隊明記ってなぁに?」。夫婦と娘、祖父母が交わす会話を通じて、自衛隊明記の改憲が必要と訴える内容。

 冒頭で、夫が「今の憲法はGHQが出した草案をもとに作られた」と解説し、妻が「どうして私たちの国の憲法を他の国の人が考えたの?」と驚く場面が描かれている。

 日本側がつくった憲法案をマッカーサーが投げ捨て、「もっと平和的で民主的な憲法を作ってあげましょう」として、GHQが草案を作った経緯も説明している。

 全体として、今の憲法はGHQに押し付けられたという「押し付け憲法論」の色合いが濃い。GHQが草案を作ったのは周知の事実だが、日本側も大きくかかわって今の憲法が形づくられたという見方も多い。

 特に、平和憲法の核心である九条の戦争放棄については、日米のどちらが発案したかは諸説あるが、GHQが草案作成に着手する前の一九四六年一月、マッカーサーと会談した幣原が戦争放棄を提案し、賛成を得たとする史料も複数ある。マッカーサーが五八年、政府の憲法調査会の高柳賢三会長に「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原首相が行った」との書簡を送ったという史料も。

 民間の「憲法研究会」が、国民主権を明示した憲法草案要綱をGHQに提出し、GHQの草案作成に影響を与えたことも明らかになっている。帝国議会の審議でも、何カ所も修正が加えられた。

 漫画はB5判、三十六ページ。自民党のホームページからダウンロードできる。

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