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令和の風 女性躍進

2019年7月22日 紙面から

支持者と抱き合って喜ぶ立憲民主党の塩村文夏さん(左)=21日、東京都千代田区で

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 「国会の景色を変えたい」「子育てが温かく受け入れられる社会を」。女性の議会進出が世界最低レベルの日本だが、21日投開票の参院選東京選挙区では、女性の視点から社会や政治の変革を訴えた女性候補が3人当選。神奈川でも現職2人が議席を守り、それぞれ改選数の半数を女性が占めた。また、れいわ新選組から出馬した重度身体障害者の新人候補が比例代表で当選。令和初の国政選挙は国会に新しい風を吹き込んだ。

 東京選挙区では、自民の丸川珠代さん、共産の吉良佳子さんの現職二人に加え、立民新人の塩村文夏さんも当選。初めて女性三人が選ばれた。

 塩村さんは午後八時すぐに当確の報道が伝えられると、支持者一人一人と握手を交わした。

 都議時代には男性議員から「早く結婚した方がいい」とセクハラやじを受け、議会でも女性蔑視があると痛感した。選挙戦では「今の国会はアンバランス。国会の景色を変えたい」と女性議員を増やす必要性を訴えた。当選を喜びつつ表情を引き締め、「外交や防衛が前面にくる政治が続いている。生活がまず一番だという国民の声を政治に届ける女性議員が少なすぎる」。参議院で女性議員が二割しかいない現状を憂い、「介護や育児、晩婚や不妊の問題にしっかり取り組みたい」と語った。

 吉良さんは支持者とハイタッチして事務所入り。「ある女の子は(性暴力の無罪判決に抗議する)『フラワーデモの声を届けて』と泣きながら手を握ってくれた。そうした困難や苦しみを政治で取り除いていきたい」と決意を新たにした。

ガッツポーズを見せる公明党の佐々木さやかさん=21日、横浜市中区で

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 選挙戦では、麻生太郎副総理が二月に「子どもを産まない方が問題だ」と発言したことを念頭に、自民党議員に同様の発言が相次いでいると批判。「子どもを産むかどうかは個人の自由。政治家に口出しされる筋合いはない」と声を上げてきた。陣営関係者は「同世代の女性に響くように、きちっと訴えることは意識した。本人が取り組んできたジェンダー問題を重視して訴えた」と話していた。

 夫の大塚拓衆院議員とともに七歳の長男を育てる丸川さんは赤いポロシャツ姿で事務所に現れた。「東京では待機児童が引き続き大きなテーマ。処遇の改善や、IT技術などで仕事の負担を軽減し、保育士が子どもたちに向き合えるよう環境の改善をしたい」と抱負を語った。

 自身の子育て経験から、街頭で「子育てが温かく受け入れられる社会をつくりたい」と強調。ベビーカーや子ども連れの女性と積極的に握手を交わし、高齢女性から「政治は混乱しているけど頑張って」と励まされた。陣営関係者は「商店街を回ると、予想以上に女性からの支持が多かった」と手応えを感じていた。

 神奈川選挙区は、いずれも現職で立民の牧山弘恵さん、公明の佐々木さやかさんが再選した。

 佐々木さんは、ピンクのポロシャツに身を包んだ女性支援者らが集まった横浜市内の選挙事務所で、「生活者の目線で耳を傾けてきたことが信任された」と顔をほころばせた。これまでの取材では「女性活躍やそれに伴う課題も考えていく」と話しており、陣営幹部は「性犯罪を非親告罪にした刑法改正など、女性の声を形にした実績を訴えた」と選挙戦を振り返った。

 世界の国会議員が参加する列国議会同盟(本部ジュネーブ)によると、二〇一八年に女性議員が議会に占める割合で、日本は百九十三カ国の中で百六十五位だった。今回の参院選は、男女の候補者数を同数に近づけるよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」が昨年五月に施行され、初めて迎えた国政選挙。全候補者に占める女性の割合は参院選では過去最高の28%に達した。 (石原真樹、岡本太、加藤健太、原尚子、土屋晴康、宮崎美紀子)

花束を手に笑顔を見せる共産党の吉良佳子さん=21日、東京都渋谷区で

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◆自民女性候補数 首相が「不十分」

 安倍晋三首相は二十一日夜のTBS番組で、参院選に自民党が擁立した候補者八十二人のうち女性が十二人にとどまったことに関し、不十分との認識を示した。「まだまだ努力不足だ。次の選挙でより多くの女性候補者を立てるべく努力を重ねたい」と述べた。

 首相は女性の政治参画に関する改革の本気度を問われ「実際に変えていきたい」と強調。「新たな候補者を選ぶときに女性の力が反映されるようにしたい。子育てと議員活動を何とか両立している方々をサポートしたい」と語った。

◆義務化議論を

<選挙制度に詳しい早稲田大大学院元教授で弁護士の片木淳さんの話> 四月の統一地方選で女性候補が各地で躍進したことや、今回の参院選で女性候補の割合が過去最高だったことを踏まえると、東京と神奈川で女性が当選者の半数を占めたことは順当といえる。都市部は男女の役割分担への固定観念が薄く、女性が社会で力を付けているので、女性が当選しやすい。ただ、これが全国にすぐに広がるかというと楽観視はできない。「政治分野における男女共同参画推進法」ができても自民党の女性候補は増えず、安倍晋三首相も努力不足を認めている。今のような努力目標ではなく、フランスのパリテ法のように、候補者の男女差を最小限にとどめることを政党に義務化することも議論すべきだ。

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