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国会の多様化へ一歩 LGBT・石川大我さん 「一人一人尊重する国に」

2019年7月23日 朝刊

同性愛者と公表し、初の国政入りを果たした石川大我さん=22日、東京都千代田区内幸町で

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 今回の参院選では女性の当選者数が過去最多タイの二十八人となり、重度身体障害者が二人当選。そして性的少数者(LGBT)の石川大我(たいが)さん(45)=立民=が比例代表で初当選した。国会にもようやく、多様性の風が吹き込んだ。

 「全国のLGBTの当事者の皆さんに、存在証明を懸けた選挙だと呼び掛けてきた。勇気を持って立ち上がっていただいたことに、心から敬意を表したい」。石川さんは当確を決めた二十二日午前、東京都新宿区の事務所で支持者らに感謝し、深々と頭を下げた。

 ゲイ(男性同性愛者)と自覚したのは中学生の時。当時の辞書で同性愛は「異常性欲」とあった。「自分は異常なのかと悩んだ。好きな人と結婚する法的仕組みもない。幸せになる権利が認められない」と絶望したが、幸福追求権や法の下の平等を保障した憲法の条文を知り、未来を感じた。二十五歳の時にインターネットで全国のLGBT当事者と知り合い、「社会を変えたい」と強く思った。

 二〇一一年に豊島区議に当選。二期目の今年三月、豊島区でLGBTカップルを公的に認めるパートナーシップ制と、差別を禁止する男女共同参画推進条例改正案について、議会が全会一致で可決することに尽力した。採決までに勉強会を重ね、当事者に話をしてもらうことで反対派議員の理解を求めた。「地方自治は民主主義の学校といわれる。敵味方を峻別(しゅんべつ)して多数決で押し切るのではなく、信頼関係を築いてきた」

 参院選で街頭に立つと、スタッフが通行人に「汚らわしい」と言われたり、つばを吐きかけられたこともあった。一方で、多様性を表すレインボーカラーのちらしを見た外国人旅行者や当事者らに声を掛けてもらった。「負けるわけにはいかない選挙だった」

 国会では、同性婚を認めた「婚姻平等法」の制定などに力を注ぐつもりだ。先進七カ国で同性婚や同性パートナーに関する法律がないのは日本だけ。少数派の権利のみを擁護すると反発する層もいるが、「同性婚を法律で認めた米国では、高校生の当事者の自殺率が下がったと聞く。同性婚を整備することで、一人一人を尊重し、支える国だという証明につながる」と力を込める。 (市川千晴)

◆重度障害者・木村英子さん 後輩「障害者の自立に勇気」

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 比例代表で初当選した重度障害者の木村英子さん(54)=れい新=は、重度障害者の自立を支援する「自立ステーションつばさ」(東京都多摩市)の事務局長を務める。代表の藤吉さおりさん(45)は「木村さんは国会で舌鋒(ぜっぽう)鋭く論戦するだろうし、その姿は重度障害者に自立する勇気を与える」と期待する。

 藤吉さんも重度障害があり、神奈川県の特別支援学校時代に木村さんと出会った。高等部の木村さんは社会福祉研究クラブに所属し、自立のためのノウハウを学ぶなど精力的に活動。自分の意見をはっきり言う「強い人」という印象で、「小学生の自分には、あこがれの人だった」。

 つばさは一九九四年に「自立ステーションがたくさんあれば、障害者が地域で生活しやすくなる」と木村さんが開設。施設暮らしの重度障害者が地域に出て、アパートなどで生活するために必要な金銭管理、人間関係の築き方、社会常識を学ぶ手助けをしている。

 藤吉さんもつばさで自立の練習をした一人。後継者の育成を考えていた木村さんから、二年前に代表を引き継いだ。木村さんが国会でも「障害者のことは障害者にしか分からない」「私のことを私抜きに決めるな」との信念を貫くと確信している。「国会は設備も制度も心もバリアーだらけ。まずは国会から合理的配慮が進むよう頑張ってほしい。私たちも障害者の思いをしっかり伝え、援護射撃したい」 (松村裕子)

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