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東京選挙区ドキュメント

2019年7月5日 紙面から

 四日始まった選挙戦。街頭に立った候補者は何を訴え、耳を傾けた有権者はどう感じたのか。東京選挙区の一日を追った。

◆10時00分

 政治記者を辞め出馬した立民新人の山岸一生さんは、新宿駅前で第一声。「忖度(そんたく)、隠蔽(いんぺい)、改ざんが日本の政治で本当に起きている。物が言えない空気にのまれかけた一人だった」と自らを省み、「おかしいことは『おかしい』と声を上げられる社会をもう一度作りたい」と声を張り上げた。

 演説を聞いていた渋谷区の主婦(55)は「政治の世界が良くない方向に向かいつつある危機感が伝わってきた」と話していた。

◆10時25分

 自民現職の丸川珠代さんは港区の外苑前交差点で出陣式。雨の中、街宣車の上で応援に駆け付けた菅義偉官房長官と手を取り合い、満面の笑み。第一声で親の介護や子育ての経験に触れ、「働きながら、子育てや介護をすることが当たり前になる社会を作りたい」と力を込めた。

 通り掛かった会社員林美香さん(46)は「同世代の女性として頑張ってほしい」とエールを送った。

◆10時50分

 「働く人の悩みや声を政治に届けていく」。社民新人の朝倉玲子さんは、新宿駅前で第一声を上げた。「最低賃金を千五百円にする」と訴え、「消費税増税は阻止します」と強調した。耳を傾けていた世田谷区の無職石橋陽子さん(57)は「税金がほしいなら防衛費にばかりお金を使わず、人を大切にしてほしい。私たちの命を守ってくれるところに投票したい」と期待を込めた。

◆11時00分

 国民新人の水野素子さんは吉祥寺駅前で、「この吉祥寺で二人の子どもを育てながら、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で二十五年働いている『宇宙かあさん』です」と第一声。「政治が先端技術に投資しないから有人ロケットは中国に抜かれ、インドにも抜かれようとしている。未来を開く技術に投資し、イノベーション立国の復活を」などとアピール。

◆11時15分

 れいわ新人で沖縄県出身の野原善正さんは、新宿駅前で第一声。開口一番、沖縄に米軍基地が集中し、名護市辺野古で新基地の建設が進む現状に疑問を投げ掛け「沖縄の痛みを自分の痛みとして真剣に考えてほしい」と訴えた。今回、比例代表に回った山本太郎代表は、野原さんが公明の支持母体の創価学会員であることに触れ「勇気を持って立候補してくれた。この心意気をかってほしい」と語気を強めた。

◆13時00分

 維新新人の音喜多駿さんは、比例代表で出馬した新人の柳ケ瀬裕文さんと掛け合いながら新橋駅前で演説。音喜多さんが「分かりやすく、楽しく伝えたい」と語ると、柳ケ瀬さんは「演説にも工夫が必要」と応じ、二人で年金制度改革を訴えた。

 足を止め聞いていた江東区の飲食店員佐藤明彦さん(54)は「若い二人にこれからを引っ張っていくエネルギーを感じる」とうなずいた。

◆13時30分

 中高年が多い豊島区の巣鴨地蔵通り商店街で、社会保障を得意分野とする自民現職の武見敬三さんがマイクを握った。働く意欲ある高齢者が働きやすい社会をつくれば若者の年金保険料の負担軽減にもつながると力説し、「活力ある健康長寿社会を」と訴えた。

 せんべい店の軒先で演説を聞いていた店主の佐藤行雄さん(77)は「安倍首相は戦闘機などにお金を使いすぎ。国民の暮らしを第一に考えて」と注文を付けた。

◆16時30分

 公明現職で党代表の山口那津男さんはJR蒲田駅前で演説し、幼児教育・保育の無償化や消費税増税時に導入する軽減税率など、与党としての実績を強調。「生活者の声を政治の真ん中に届ける」と呼び掛けると、大勢の聴衆が拍手喝采を送った。

 妻と二人で聞いた大田区の会社員安藤龍男さん(67)は「年金が話題になったようにやりくりは大変だが、軽減税率はありがたい」と話した。

◆17時00分

 無所属元職の野末陳平さんは、四ツ谷駅近くで第一声。「高齢者が言いたいことを言える場所をつくりたい。次の世代が安定した老後を暮らせるよう、年金や税制、医療、介護といった問題に高齢者の立場から発言したい」と訴えた。見守っていた板橋区の会社員の男性(69)は「一番の関心は年金。政策や対案を出し合ってほしい」と選挙中の論戦に期待していた。

◆17時30分

 立民新人の塩村文夏さんは枝野幸男党代表らと有楽町駅前で演説。就職氷河期世代の当事者だとして「非正規のため低収入で、退職金のない人が爆発的に増える。安定雇用につなげる政策が必要」と訴えた。様子を見ていた大田区の大学四年杉原諒香さん(21)は「具体的に何をするのか分からなかった。税金に関心があり、他候補の訴えもネットなどで調べたい」とした。

◆18時00分

 吉祥寺駅前で、共産現職の吉良佳子さんは三歳の子を育てる母として、「戦争をしないと決めた憲法を未来の世代に手渡したい」と語り掛けた。「一人一人の一票に政治を変える力がある」と思いを込めると、「がんばれ!」の声が飛んだ。聞いていた杉並区の画家高木志記さん(29)は「消費増税、年金問題、改憲に注目して投票先を決めたい」と話した。

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