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なぜ少ない?氷河期世代への訴え

2019年7月19日 紙面から

氷河期世代の候補者の訴えを聞く人たち。高齢者が多い=江東区で

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 バブル崩壊後の経済低迷期に、安定した職に就けなかった人が少なくない就職氷河期世代。参院選の東京選挙区では、30代半ば〜40代半ばのこの世代が候補者の3分の1を占めるようになった。だが、支援策の訴えはあまり多くなく、有権者側の関心も高くなさそうだ。その背景を探ってみた。 (石原真樹、杉戸祐子、中村真暁)

 「氷河期世代を安定雇用につなげれば、社会保障費の増大を防ぐことができ、みなさんの負担を軽くできます」。公示後の休日、杉並区の荻窪駅前で、氷河期世代の女性候補が声を張り上げた。同じ世代の男性会社員(40)は、演説にいったん足を止めたが、すぐに歩き出した。

 男性は非正規雇用からIT企業の正社員になったが、「氷河期について訴えられても響かない」と興味なさそうに話した。むしろ「自分より若い世代も年金がもらえるか分からなかったりで大変」と同情。候補者自身も「反応はよくないですね」と苦笑いした。

 この世代は、バブル崩壊後の一九九三〜二〇〇四年ごろに高校や大学を卒業して社会に出た。当時は企業が新卒採用を抑え、安定した職に就けない人が続出。不安定なまま年齢を重ね、仕事がうまくいかずにひきこもる人もいる。

 内閣府の経済財政諮問会議は四月、氷河期世代を「人生再設計第一世代」と言い換え、支援強化を提案。六月には安倍政権が三年間でこの世代の正規雇用を三十万人増やすとぶち上げた。厚生労働省内には「官邸が参院選でアピールするため」との見方もあった。

 ところが、この世代へのアピールは東京選挙区であまり目立っていない。同じ世代の男性候補者は「氷河期問題は大事だと思ってるが、演説を聞きにくる人が知りたいのは政策論より『あなたはどういう人間か』だと感じる。街宣は時間も短い」と話す。

 氷河期世代は、ちょうど仕事や子育てが忙しい時期でもある。このため、演説を聞きに来る聴衆は高齢者が多く、候補者も自然と年金や介護などの訴えが中心になるとみられる。

 さらに、和光大の竹信三恵子名誉教授(労働社会学)は「この世代は経済が良かった時代を知らないから、状況が良くなった時のイメージができない。我慢すれば良いと思ってしまったり、もっと大変な人を見つけて納得してしまう」と指摘。「氷河期世代を支援すると社会がどう変わるのか、候補者は大きな構想を語るべきだ」と話す。

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