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「保育の質、確保して」子育て世代切実 「改憲、安保も争点だけど…」

2019年7月20日 紙面から

保育園から帰る親子=武蔵野市で

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 21日投開票の参院選から2カ月ほどで、幼児教育・保育の無償化が始まる。費用負担は減るものの、子育て世帯からは待機児童対策とともに「保育の質」の確保を求める切実な声が上がる。長男(8つ)が5年間通った認可保育園とは異なり、園庭の狭い別の認可園に次男(5つ)を通わせる女性は「同じ質の保育を体験させてやれなくて、かわいそう」と嘆いている。 (杉戸祐子)

 武蔵野市の会社員中井いずみさん(42)の長男は、ゼロ〜六歳の約百人が在籍する認可園に通った。運動会でリレーができる広さの園庭があり、幅広い年代の保育士がいた。幼児クラスの定員は各二十人で、小学校に向け、集団生活を経験できる。次男も一緒に通わせようと、ゼロ歳時から申し込んだが、四年連続で通らず、認可外に通った。

 次男は今年二月、定員に空きの出た別の認可園に転園した。同級生は五人。小さな園庭があるが、近隣との関係から外に出て遊べるのは週二、三回。窓は、子どもが散歩に出掛けた時や昼寝中しか開けられない。

 保育士は若手が中心で、出入りも頻繁だ。「現場の先生たちは厳しい環境の中で頑張ってくれている。でも、長い目で子どもの成長や変化に気付ける状況ではない。同じ認可園でも質は比べものにならない」。中井さんは実感を込める。

 安倍晋三首相は参院選の街頭演説で「五十三万人分の保育施設を整備した。待機児童ゼロを必ず実現する」とアピールした。保護者グループの一員として、保育を巡る問題に取り組む中井さんは、幼保無償化や待機児童解消も重要だと感じている。だが、それは納得できる預け先であることが前提だ。「いまは親が保育園を自由に選べる状況ではない。だからこそ、質の格差を解消してほしい」

 子ども家庭福祉が専門の山縣(やまがた)文治・関西大学教授は「保育の質の確保には社会として投資が必要。保育士の賃金を上げるなど待遇を改善し、勤務時間内に質の良い保育プログラムを考えられるような環境にするべきだ」と語る。

 まもなく投票日を迎える参院選。「国政選挙だから改憲や安全保障も大切な争点。だけど、投票基準は子育て政策。子育て世代に対する理解があり、自分たちのテーマとして捉えてくれる議員が一人でも増えてほしい」。中井さんはこんな思いを込めて、投票に臨む。

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