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栃木

有権者の判断材料は? 宇大・三田准教授に聞く

2019年7月10日 紙面から

「地方創生は現政権の業績を評価する際のポイントの一つ」と話す三田准教授=宇都宮大で

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◆地方創生、消費税…共感できる人に まずは投票に行こう

 21日投開票の参院選で、県内の有権者はどんな点に注目して判断材料を集めたら良いのか。宇都宮大の三田妃路佳准教授(政治学)にポイントを聞いた。 (高橋淳)

 −県内における主な争点は何でしょうか。

 衆院選と違って政権選択選挙ではないので、現政権の業績を評価しましょう。地方の課題としては、政府が掲げてきた「地方創生」「まち・ひと・しごと創生」があります。栃木に何をもたらしたのか。仕事は増えたかもしれませんが、人口減は止まっていない。そもそも国の計画の実現可能性に問題はなかったのか。そこは評価の対象になるのではないでしょうか。

 −国全体の課題ではどうでしょうか。

 「老後資金二千万円不足問題」とともに年金が注目されました。麻生太郎財務相兼金融担当相をはじめ、政府の「臭い物にふたをする」かのような姿勢は、確かに不誠実でした。しかし年金制度の維持、運営は誰が政権を担っても大変です。年金制度そのものというよりは、年金を巡る説明責任をどう果たすかという観点で捉えるべきです。

 消費税率10%への引き上げは、各党で主張が明確でわかりやすいです。ただ、もし引き上げないと主張するなら、代わりに社会保障の財源をどうするのかまで示さないと、現実性に欠けます。憲法の問題は、現政権にこのまま任せたら、いずれ改憲への道を開くことになるでしょう。それで良いのか良くないのか、ということです。

 政策的にいろいろと考えるのが難しいと感じるなら、シンプルに「よりましな人を選ぶ」「より共感できる人を選ぶ」でいいのではないでしょうか。まずは投票に行くことです。

 −参院に望むことは。

 その時々の国民の意見をより強く反映させるのが衆院なら、参院は衆院の歯止めの役割が期待されます。解散がなく六年の任期が決まっているので、衆院とは異なる多様な国民の代表の下で、国のあり方に関わる課題に落ち着いて取り組むことを望みます。

 −さまざまな選挙で投票率が低いです。特に若い世代で。

 有権者に「選挙に行かなければ生活や国が大変なことになる」という危機感がありません。政治の側は、そう有権者に思わせる争点を示し切れていません。候補者の問題もあるでしょう。明らかに強い人とそうでない人の戦いでは、高い投票率は望みにくい。政党には「勝てる人」を擁立する努力が必要です。

 大学では「シルバーデモクラシー」の話を学生にしています。人口が多くて投票率も高い高齢世代を意識すれば、次世代を見据えた政策や制度設計は優先度が低くなってしまいます。若い世代は投票に行かなければ、政策的に利益を得られる可能性がますます低くなるでしょう。学生には人口ピラミッドを見せて、投票に行くよう呼び掛けています。

<みた・ひろか> 専門は政治学、公共政策論。慶応大大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士。著書に「公共事業改革の政治過程」(慶応大出版会)など。

◆「若い世代の関心薄い」知事が懸念

 福田富一知事は9日の定例記者会見で、参院選について「盛り上がりに欠けている。若い人を中心に関心が薄いと感じている」と所感を述べ、若い世代に投票を呼び掛けた。福田知事は「10、20年後、若い人たちが中心的役割を担う。少子高齢化で働く人々に負担がかかる。どう克服するか、今から準備しなくてはならない。自分たちの事として関心を持ってもらいたい」と述べた。

 候補者に向けては「若い世代が中心になる社会において、どう国を富ませることができるのか。街頭から自分の考えを大いに訴えてほしい」と、国の将来を見据えた論戦に期待感を示した。 (北浜修)

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