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千葉

原発事故から6年半 宙に浮く指定廃棄物問題

2017年10月7日

伊藤忠彦環境副大臣(左から3人目)に要望書を手渡す5市長=8月、東京・霞が関の環境省で

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 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、原子力規制委員会は新規制基準に「適合」とする審査書案を了承、新たな原発の再稼働が現実味を帯びてきた。しかし、県内九市で一時保管している高濃度の放射性物質を含む指定廃棄物の行方は、東京電力福島第一原発事故から六年半以上がたっても、いまだ宙に浮いたままだ。当初、国の責任で最終処分するはずだったが、政治の不在が自治体間のあつれきを生んでいる。(林容史)

 八月、指定廃棄物を一時保管する柏市など五市のトップが環境省に出向き、長期管理施設の早期建設を求めて環境相宛てに要望書を提出した。要望活動は昨年十一月に続き二度目。対応した伊藤忠彦副大臣は「二〇二〇年の区切りは非常に重要」と述べ、東京五輪・パラリンピック開催を問題解決のリミットとして初めて表明した。

 「受け入れられない」。県内最大の千六十四トンを抱える柏市の秋山浩保市長は、三年という時間に納得しなかった。早期解消を約束し、市は保管地の町会などと確認書を交わしており、「地元の皆さんとの信頼関係が失われてしまう」と危機感を募らせた。しかも環境省は、二〇年までに廃棄物の搬出を終えるのか、単に道筋を付けるだけなのか明確にしていない。市廃棄物政策課は「施設を建設するだけでも一、二年はかかる」として搬出完了には懐疑的だ。

 国は一五年四月、長期管理施設の建設候補地として千葉市中央区の東電千葉火力発電所を選定した。千葉市は受け入れを拒否し、保管していた指定廃棄物七・七トンについて放射性セシウム濃度が基準を下回ったとして指定解除を申し出、一六年七月に認められた。

 市廃棄物対策課は「市内に指定廃棄物がない状態での受け入れは市民の理解が得られない」とし、「分散保管」を主張する。一方、指定解除後は環境省側から話し合いなど働き掛けは皆無で、「中ぶらりんの状態」と困惑もみせる。

 これに対し、国に要望した五市は「全市町村の首長が県内で一カ所に集約することで合意したはず」と千葉市のやり方を批判する。「国は粘り強く千葉市を説得してほしい。県も調整役として汗をかいてほしい」と訴える。

 四百九十三トンを保管している柏市の市第二清掃工場周辺では住宅などの建築が進む。新たな風評被害を恐れてか、住民らの口は重く「うまく付き合っていかなければならないのかな」という声も聞かれた。

 工場を囲む森林をウオーキングしていたパート女性(59)は「最初は不安だったけど、目に見える被害はなかったし、風化したって感じかな。このままで良いとは思わないけど、政治には期待できない」と話した。

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