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千葉

「騒音被害 我慢の限界」 成田空港の機能強化案

2017年10月8日

夏目誠社長(前列中央)に建言書を提出する山崎和敏会長(同左)=成田市の成田国際空港会社で

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 成田空港で、三本目の滑走路を新設することや、航空機が原則発着できない夜間の時間帯を短縮することなどを柱とした機能強化案が示され、周辺自治体で議論が続いている。地域発展の起爆剤になると歓迎する声もあるが、確実なのは騒音被害を受ける人たちが増え、その負担が増すこと。不満や懸念、反対の声も多い。 (小沢伸介)

 新滑走路の案は、B滑走路から南に三・三キロほど離れた芝山町に位置し、長さ三千五百メートル。成田国際空港会社(NAA)は、空港の東側で整備が計画されている首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の空港側一帯を、新滑走路建設に必要な用地の候補地としている。

 空港周辺の商工会など経済団体でつくる「成田第三滑走路実現を目指す有志の会」は、機能強化に併せて、大規模なバスターミナルの新設、「空港東ゲート」の整備などを盛り込んだ建言書をまとめ、NAAの夏目誠社長らに提出した。

 同じ空港周辺でも、多古町など東側地域は成田市や富里市に比べて発展が遅れてきた。圏央道の開通もにらみ、格差を埋める好機とみている。山崎和敏会長(多古町商工会長)は「空港なくして地域の発展はない」と話し、機能強化を後押しする。

 新滑走路が建設される場合、移転を余儀なくされる可能性がある芝山町と多古町の五自治会は、町長やNAAに対し、空港機能強化に理解を示し、基本的に協力していく意向を表明している。多古町一鍬田区は、集団移転で地域コミュニティーが維持できることなどを要望。瓜生照夫区長は「区に加入している三十八戸全て、圏央道の外側にある九世帯も一緒に移転したい」と訴える。

 一方、騒音被害の増大が見込まれる横芝光町の住民グループ「航空機騒音から生活を守る会」は、飛行コース直下で移転を希望する人全員への移転補償と、新滑走路の位置の変更などを求めている。鈴木信雄会長は「旧横芝町にだけしわ寄せがくる無謀な計画。騒音被害は二倍になり人命にもかかわる。我慢の限界だ」と怒りをにじませた。

 空港周辺の選挙区となる千葉10区の立候補予定者は「騒音地区には十分な配慮が必要」などと声をそろえているが、鈴木会長は「政治の力には期待しない。地元の弱い立場の住民を救済するため、NAAと粘り強く話し合いを進めていく」と誓う。

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