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<若者の選択>9条改憲 淑徳大生が討論

2017年10月21日

9条改憲の是非を話し合う学生たち=淑徳大で

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 二十二日投開票の衆院選は、改憲勢力が国会発議に必要な三分の二以上の議席を占めるかどうかが注目されている。淑徳大コミュニティ政策学部(千葉市中央区)の一年生たちは、授業で九条改憲をテーマに議論した。北朝鮮情勢への不安から改憲に前向きな意見や、不戦を誓う九条の理念が遠のく恐れを指摘する声も上がり、悩みながら一票を託す先を見極めようとしている。(中山岳、黒籔香織)

 授業は今月四日にあり、一年生約百二十人が参加。五人ほどの班に分かれ話し合った。

 「日本が戦争を起こせるようになれば、近隣国が巻き込まれかねない。そこは問題じゃない?」

 「(日本が戦争の)火種になるってことか。確かに」

 船橋市の塙(はなわ)彩乃さん(19)の班から、改憲すれば他国を刺激し戦争を誘発しかねないとの意見が出た。一方、ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮も話題に。塙さんは討論後、「北朝鮮がミサイルを撃ってきたら、今の憲法で国民が守られるか不安」と明かした。

 安倍内閣は二〇一四年七月、閣議決定で、これまでの憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認。一五年九月には安全保障関連法が成立した。今回の衆院選で、改憲に前向きな勢力が国会発議に必要な三分の二を上回れば、改憲の動きが一気に加速する可能性がある。

 塙さんは「集団的自衛権を認めるのは、九条の戦争放棄に反する。安倍さんは戦争も辞さない感じを受ける」と危ぶむ。改憲する場合は「自衛隊の存在を専守防衛に限る、と明記すれば良いかな」と考える。

 一方で、自民党の「憲法に自衛隊を明記する」との公約を支持する意見も。成田市の大橋直哉さん(19)は「日本は北朝鮮に弱いと思われている。改憲し、威嚇できる程度の武力を示せば対抗できるのではないか」と話す。

 千葉市の成田海斗(かいと)さん(18)は、今年七月に国連で採択された核兵器禁止条約に日本が不参加だったことに触れ、「被爆国の日本が参加すれば説得力は増すと思う。でも今の日本の国防は、アメリカに任せている部分もある」と語る。日本を含め軍縮が進んでいないとも感じているといい、「改憲を認めるか、理想と現実は違うし、悩んでいる」。

 学生たちは討論後、九条改憲の賛否の考えを付箋に書き、投票。賛否は、ほぼ二分した。

 授業を企画した矢尾板俊平・准教授(総合政策論)は「改憲論議を現実的な問題ととらえ、賛否いずれの立場でも悩みや迷いを感じる。若者全体の空気感と言えるのではないか」と指摘する。議論に対する拒否反応がなかった点に注目し「学生たちには、特定の主義・主張に偏らず、冷静に議論できる土台はある。改憲の是非は、最終的に国民投票で決まる。時間をかけ、国民全体で議論を熟成していく必要がある」と話している。

 <改憲手続き> 改憲原案は、衆院は100人以上、参院は50人以上の議員の賛成で、衆参両院のいずれかに提出できる。

 衆参でそれぞれの議員による憲法審査会が原案を審議し、過半数の賛成で可決、両院の本会議で、総議員の3分の2以上の賛成で可決すれば、国会が改憲案を発議(提案)し、国民投票が実施される。

 国民投票は発議から60〜180日で行われ、有効投票総数の過半数で承認される。

 今回の衆院選の定数は計465議席(小選挙区289、比例176)で、改憲発議に必要な3分の2は、310議席。

 ◇憲法9条

(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

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