群馬
2017年10月16日
シャッターの閉まった店が目立つ商店街。にぎわい復活へ奮闘が続く=前橋市千代田町で |
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衆院選も残り約一週間。各党、各候補の訴えも熱を帯びている。改憲や安全保障、消費税増税などが争点となっている今回の選挙、安倍政権の経済政策も、その一つだ。衰退が指摘されて久しい県都・前橋市の中心街。老舗が並ぶ一方、空き店舗もある商店街で、かつてのにぎわいを取り戻そうと奮闘を続ける関係者は今回の選挙をどう見ているのか。商店主らに聞いた。 (石井宏昌、竹島勇)
「景気回復? 実感はないなあ。どこの国の話なの、という感じ」と漏らすのは、カバン店の外山昇店長(59)。一九〇四(明治三十七)年、同市千代田町の立川町大通り商店街に馬具店として創業。二十年近く前にアーケードの一角に店を移した。
週末のイベント開催などの取り組みを評価しつつ、「人はなかなか戻ってこない。変わらないなあ」とため息交じりだ。「われわれの自助努力が足りないのかもしれないが『この街に来たい』という魅力が必要。ここにしかない何か」。国や行政に、その後押しを望んでいる。国に期待することがもう一つある。「自分が年を重ねたからだろうけど、年を取っても安心して暮らせるようにしてほしい。そうすれば、みんなも少しはお金を使うようになると思う。将来が不安では消費には回らないよ」と話す。
アーケード一帯の前橋中央通り商店街振興組合の大橋慶人理事長(58)は「地域の課題をしっかりと見つめてほしい」と注文する。これまで空き店舗を利用した若者向けのシェアハウス開設など先進的な取り組みを進めてきた。大橋さんは「空き店舗数、交通量、売り上げ、どれも十年前と比べて悪くなっている」と中心商店街の現状を指摘。「少し前までは地方創生という言葉が盛んに言われたが、今回は争点にもなっていない。東京一極集中と地方の疲弊は今も進む。地域の実情にあった政策をしっかりと進めてほしい」と力を込めた。
弁天通り商店街で戦後すぐから続く店を継ぎ、現在は祭り用品店を営む岸篤美(あつよし)さん(70)は、同商店街振興組合理事長も務める。にぎわいがかつてほどではないことを認めつつ、「町が全て新しくなればいいというものではない。古い町で古い店が存続できるような行政に期待したい」と話す。「私ら零細には景気回復の実感はない」
張り切る若手経営者もいる。今年三月にオープンしたジムを経営する池田道成さん(25)は「商店街に活気がないといわれるが、経営は順調」と胸を張る。「出店して知ったのは商店街には他の店との一体感があり、人情が感じられること」と指摘。候補者には「ちゃんと商店街に足を運び、現実を見てくれる人に期待したい」と力を込める。景気回復のためには安定政権を望むという。
また、飲食店経営の男性(43)は「投票には必ず行く。単なる現状批判でなく、反原発政策などに具体性のある主張を示す人に入れる。納得できなければ批判の白票を投じる」ときっぱり。一方、これまで投票したことがないという飲食店経営の女性(49)は「誰が当選してもどんな内閣になってもなるようにしかならない」と諦め顔で話した。