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群馬

自民が3回連続独占 野党、追い上げ及ばず

2017年10月23日

 衆院選は二十二日投開票され、県内の五小選挙区は自民が五議席を独占した。自民の独占は二〇一二年の前々回から三回連続で、「王国」の強さを見せつけた。小選挙区の当日有権者数は百六十四万一千四百八十人で投票率は51・97%だった。野党は1区と3区で追い上げたが及ばなかった。民進党分裂や相次ぐ新党結党など再編の混迷により、改憲や安全保障などの争点が見えにくくなったことなどから無党派層の関心を呼び起こすことができず、安倍政権への批判票も分散し、自民独走を許した。 (石井宏昌)

 1区は、比例から移った自民前職の尾身朝子さん(56)が小選挙区で初当選。公示直前に比例に回った新人に加え、一四年の前回に無所属で次点だった上野宏史さんも支援し、組織選挙で支持を広げた。希望前職の宮崎岳志さん(47)は安倍政権の「森友・加計学園疑惑」や国会議員の世襲を批判し、政治の刷新を訴えたが、政権への批判票が共産新人店橋世津子さん(56)と分散した。

 2区は自民前職の井野俊郎さん(37)が自民支持層を手堅く固め三選。希望前職の石関貴史さん(45)は「反自民」の結集を訴えたが届かなかった。共産新人長谷田直之さん(61)も及ばなかった。

 県内で唯一、与野党一騎打ちとなった3区は自民前職の笹川博義さん(51)が商工農関係者らの支持を固め、競り勝った。立憲民主新人の長谷川嘉一さん(64)は労組などの支援で政権批判を展開したが小選挙区では及ばなかった。

 4区も自民前職の福田達夫さん(50)が祖父赳夫、父康夫両元首相から引き継ぐ強固な地盤で圧倒。希望新人の不破弘樹さん(51)は労組に加え、無党派層へ浸透を図ったが届かず。共産新人の萩原貞夫さん(68)も伸び悩んだ。

 5区も、自民前職の小渕優子さん(43)が父恵三元首相からの地盤と知名度で圧勝した。共産新人の伊藤達也さん(34)、社民新人の高橋宣之さん(63)は改憲反対などを訴えたが及ばず。希望新人の猪口幸子さん(61)も届かなかった。

【解説】野党混迷「受け皿」分散

 安倍晋三首相の突然の解散表明で短期決戦となった今回、自民が地方議員や業界団体などを軸に組織力の強さを発揮した。

 分裂の可能性があった1区も党の調整で一本化。前回は1区から無所属で出馬した元職が比例南関東で自民候補となり、1区の自民候補を支援するなど党の地力が目立つ結果となった。

 だが、有権者が安倍政権や自民を積極的に支持したかについては疑問も残る。政権批判の「受け皿」となる野党の不在、あるいは分散が、結果的に自民を利することになったのではないか。

 希望結党や民進の分裂、希望への合流に反発する勢力の立憲民主の結党と公示前まで続いた野党再編で有権者の選択肢は増えた一方、戸惑いも広がった。

 九条改憲や安全保障法制、脱原発、経済政策のアベノミクス、消費増税など争点の多くで各党の主張が入り組み、「安倍政治の継続か否か」が最大の争点になった。

 だが、受け皿とみられた希望は再編のごたごたの中で失速。県内でも民進から出馬予定だった四人が希望と立民に分かれ、うち三人は民進県総支部が支援したが、希望合流をめぐる混乱が尾を引き、選対内や支援労組で「温度差」を指摘する声もあった。共産、社民を含めた野党連携も県内では3区だけだった。

 地方組織のない希望や立民を支えた民進県総支部幹部は「選挙後、さらなる野党再編がある」と推測する。中央の再編に振り回され、求心力を失った感がある民進など県内の野党勢力だが、地方組織の立て直しは急務だ。

 一方、自民も有権者の約半数が棄権したことを真摯(しんし)に受け止め、政治不信の解消に努めることが求められる。 (石井宏昌)

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