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<明日への1票>(中)子育て 原発 積極的に議論して 大里千恵子さん(31)

2017年10月5日

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 ひたちなか市で長男(5つ)、長女(2つ)の子育てをしながら、パートも掛け持ち忙しい毎日を過ごしている。

 争点の一つになっている消費税の使い道について「子育て支援に充ててくれるのであれば、そこは期待したいですね」と話す。

 夫(62)と共働きで、住宅ローンの返済も続けているだけに、子育て支援策には関心がある。

 ただ、子育て支援や経済政策よりも、選挙戦で各党に議論してほしいのは、原発の再稼働の是非だ。

 自宅が、日本原子力発電東海第二原発(東海村)から約十五キロ。放射能漏れの大きな事故が起きれば、子ども二人を抱え、避難を迫られることになる。だからこそ、再稼働の行方は常に気になっている。

 原発の怖さを実感したのは、やはり東京電力福島第一の事故だった。自宅の庭で放射線量が急激に上昇し、食べ物にしても産地を選び購入するなど、神経を擦り減らした。当時はまだ、子どもは生まれていなかったが、もし幼児を抱えていたら−。

 「あんな思いをもうしたくない。子どもを持つ母親なら、誰もが思うことではないでしょうか」

 その記憶がまだ生々しい中、東海第二の再稼働が少しずつ近づいている。

 東海第二は来年十一月に、寿命の四十年を迎え、運転延長に向け準備が進む。さらに、原子力規制委員会による新規制基準に基づく審査も大詰めを迎える。

 それなのに、事故が起きたときの現状の避難計画案は心もとない。

 案では、一定レベルの放射能漏れが予測されるまでは、屋内退避が指示される。「小さい子がいるのに、自宅待機を続けるのは不安だし、そこから『避難しろ』と言われてもすぐには難しい。渋滞などもあって、被ばくから逃げきれないのではないか」

 原発に関心を持ったもう一つの理由として、知人の紹介で、福島の事故で避難した被災者支援に取り組む団体の事務局で働くことになったことを挙げた。

 福島では、いまだに五万人以上が故郷に戻れず、県内にも約三千五百人が避難生活を続ける。「事故は収束していないのに、なぜ再稼働するのか」。多くの避難者の声を聞き寄り添うようになり、そんな思いが強くなった。

 安倍政権の四年十カ月で、九州電力川内(せんだい)1、2号機(鹿児島県)を皮切りに、計五基が再稼働した。「事故直後に比べ、だんたん原発が語られなくなったと感じる。原発が立地する県にとって、大切で身近なテーマ。今度こそ、積極的に議論してほしい」と望む。 (山下葉月)

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