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茨城

<明日への1票>(下)高齢者 戦争への道を閉ざして 小松賢一さん(75)

2017年10月6日

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 仕事の都合で神栖市(旧波崎町)に一九八〇年、移り住んだ。愛媛県出身で建設資材会社に就職後、兵庫県の尼崎を経て、製造工場がある神栖で落ち着いた。

 四十年にわたり勤めた会社を無事に退職し、今はシルバー人材センターで、庭木の剪定(せんてい)などを担う。「仕事をしていると、酒もうまいし、妻の邪魔にもならない。一石五鳥ぐらいの価値があるね」と笑う。

 仲間と酒を飲んでいると、消費税や地域医療の話になるという。

 衆院選で、争点の一つになっている消費税増税には「お酒を買うのも、大変になる。大企業は今、もうかっていて、含み資産をたくさん持っている。法人税を上げるとか、国や国会が身を切る改革をするとか、そういう財源を出してもらいたい」と訴える。

 地域再生に関わる医療の充実も、選挙の大事なテーマだ。神栖市が含まれる鹿行地域は医師不足が深刻で、二〇一四年の十万人当たりの医師数は九〇・七人で、全国でもワースト2。神栖市では救急搬送が平均五十分もかかるとされる。

「助かる命も助からない。日本中のへき地でそういう傾向があるでしょ。都心ばかり良くなって地方が遅れていく」と嘆く。

 仲間と語り合いながら、楽しい酒を飲めるのは、平和が大前提。だからこそ、憲法九条への思いは強い。「日本が七十年以上、平和だったのは、九条を変えずにきたからだ」と九条の価値を信じる。

 三歳で体験した戦争の記憶は消えない。「(故郷近くの)宇和島の空が、空襲の焼夷(しょうい)弾で真っ赤になったこと、防空壕(ごう)に避難したことは、今でもはっきり覚えている。そういう轍(てつ)を子や孫に踏ませたくない」

 九条に手を付けようとしている改憲勢力は、北朝鮮情勢が緊迫していることを理由に挙げている。「北朝鮮であっても、あくまで対話をしていかないと、それこそ戦争になってしまう」

 自衛隊の憲法への明記も、持ち上がっている。「自衛隊は(災害などで)困っている人を助ける組織であってほしい」と願う。

 「明記することで、海外派遣が増えることにつながらないか」と疑問を感じる。海外派遣が増えれば、駆け付け警護などで交戦する恐れも出る。「相手から見たら、戦争をしかけたことになってしまう。戦争のきっかけになりかねない」とみる。

 当選した議員たちに期待するのは「戦争につながる道を閉ざすこと」−。幼児期の体験から、そんなメッセージを込める。 (酒井健)

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