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「観戦せず 政治参加を」

2017年10月7日

東京都市大・李准教授 若者の奮起促す「政治をショーとして観戦するのではなく、参加するのが有権者の責任だ」と語る李准教授=都筑区で

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 突然決まった衆院選は野党再編を呼び、候補者の政治家としての責任や一貫性を問うものになりつつある。メディアと政治の関係を研究する東京都市大横浜キャンパス(横浜市都筑区)の李洪千(イホンチョン)准教授は「争点は安倍晋三政権を続けるかどうかだ」と指摘する。ただ、政策論争もないまま突き進む選挙に落胆。「政治は見るものではない。参加してほしい」と、特に若者の奮起を期待する。 (志村彰太)

 李さんは今回の解散を「全く異常な選択」と指摘。その上で「安倍首相は九月下旬、国連総会で北朝鮮問題に対し、協力を世界に呼び掛けたばかり。政治の一貫性を保つという責任を放棄している」と批判する。

 野党も、このままでは批判票の受け皿になれないという。「旧民主党政権での失敗を総括し、国民に説明していない。無責任な体質に有権者は失望している」と、まん延する政治不信の理由を解説する。

 無責任体質について、李さんは衆院選の制度にも問題があると考える。「任期満了まで選挙がない参院選に比べ、衆院選は期間が短い。国民やメディアが政治家を検証する時間がない」。選挙前に論争を尽くして、政権の狙いや争点を整理すべきだという。

 また「有権者のせいでもある」と語る。有権者が政治に責任を問わなければ、政治家は緊張感をなくしていく。李さんは、二〇一三年のインターネットによる選挙運動解禁が、有権者の政治意識を変える契機になると期待した。だが、解禁から四年たった今も「状況は変わっていない」。

 「ネット選挙は、政治家と国民が同じ土俵で議論できる公平な空間。しかし、政治家は情報を発信し、国民は受け取る流れにとどまっている。本当は国民が主人公なのに」と落胆する。李さんによると、ネットが政策論争に有効活用されていないのは「炎上」を怖がるからだけではない。特に若い人が、どんな未来を政治に求めるか発信しないため、コミュニケーションが成立しないという。

 一方で悲観はしていない。李さんは「私が研究対象にしている韓国も、投票率が上がったのはネット選挙が解禁(二〇〇〇年)された十年後。政治参加意識が変わるにはしばらく時間がかかる」と、今後の推移を見守ることにしている。

 衆院選の公示は十日に迫っている。投票を迷っている人に、李さんは「自分の選択には、必ずリターンが来る。ツケも利益も自分に降り掛かる」と一票の価値を説いている。

 <李洪千(イ・ホンチョン)> 韓国記者協会勤務を経て、2011年に慶応大総合政策学部専任講師、15年4月から現職。共著に「インターネットが変える選挙−米韓比較と日本の展望」がある。

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