• 東京新聞ウェブ

埼玉

<注目区を歩く>(1)11区 亀裂生んだ自民の裁定

2017年10月12日

 「二階(俊博)幹事長にあれやこれやと工作して、私の公認を外すよう働き掛けた。こんな不合理な、不正義なことがありますか」

 夏のような日差しが降り注ぐ公示日の十日。無所属前職の今野智博が自民幹事長の名を出して、怒りの声を張り上げた。JR深谷駅北口のロータリーには、無所属にもかかわらず「自民党」と染め抜かれた青いのぼり旗が、いくつもはためいていた。

 批判の矛先は、今野が「赤いポスターの人」と言う無所属前職の小泉龍司だ。小泉にかつて自民復党の働き掛けがあったこと、無所属議員のため地域に予算を付けられず、地域が衰退していること−。今野が舌鋒鋭く批判を浴びせると、脇を固める自民県議らから大きな拍手が上がった。

 二〇〇五年の郵政選挙を機に自民を離党し無所属となった小泉に対し、今野は過去二回、党公認を得て戦った。しかし、今回は骨肉の公認争いの末、小泉が巻き返しに成功した。

 小泉を復党させて無所属での立候補を認め、今野を無所属の党推薦候補とする−。自民党本部は公示直前、異例の決定をした。小泉を自身の派閥の特別会員とする二階の強い意向が働いたとされる。二人を競わせ、勝者を追加公認する方針だ。

 一方の小泉。深谷市での第一声は弁舌滑らかだった。「いろいろあったが復党することができた。十二年かかった。まだ道半ば。(投票日までの)残り十二日間の大事な行程を仕上げれば、自民党代議士として返り咲ける」。出陣式には公明市議らも駆けつけ、蜜月ぶりを見せつけた。

 過去二回の選挙は小泉がほぼダブルスコアで勝利している。今野は自民、公明が圧勝した前回、惜敗率で52・94%と小泉に「大敗」。しかし、比例北関東ブロックに名簿登載された自民の重複立候補者が小選挙区で続々と当選し、かろうじて比例復活できた。

 今野は七日、本庄市民文化会館で開かれた市民向けのカラオケ大会の席で「男はつらいよ」を熱唱。公認を外された自らの心境を重ねた。

 希望からは元銀行員の新人三角創太が立候補した。母子家庭で育った三角は「経済的な理由で教育の機会を奪われるのはおかしい」と、政治家を志すようになった。

 当初、13区で民進から立候補する予定だったが、希望への合流を受けて「国替え」を強いられた。三角は「13区で活動した一年半がふいになったが、党は違う場所で出馬せよとのこと。サラリーマンの転勤のようなもの」と自分に言い聞かせた。連合埼玉が側面支援し、知名度アップを図る。

 共産の新人柴岡祐真は三回目の出馬となる。政治活動の原点は、太平洋戦争で青年期に勉強する機会がなかったという祖父の無念だ。「平和な日本をつくっていこう」と、大学入学直前に入党。党の委員として経験を重ねてきた。

 深谷駅北口での出発式の後、記者団の取材に「自公政権批判の手応えを感じている。希望も自公の補完勢力でしかない。無党派のリベラルな層に支持を訴えていきたい」と述べた。 =敬称略

  (出来田敬司)

     ◇

 突然の解散を機に始まった政界再編の余波は、県内選挙区の構図にも変化をもたらした。一方で、個別の事情から激戦が予想される選挙区もある。注目区の候補者を追った。

     ◇

柴岡 祐真33 党中央委員    共新

今野 智博42 (元)法務委理事   無<前><2>  =自

三角 創太29 (元)銀行員     希新

小泉 龍司65 (元)青少年特委理事 無前<5>

 (上から届け出順)

主な政党の公約

新聞購読のご案内