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東京

激戦区ルポ 2区・3区

2017年10月15日

◆「後ろ盾」に頼らず

2区 中央・港(北東部)・文京・台東区(14区を除く区域)

 「未曽有の厳しい選挙だ」。自民都連最高顧問で元通産相の深谷隆司さん(82)は険しい表情で語った。

 念頭にあるのは、今回の区割り変更。衆院議員を九期務めた重鎮が「最も力のある地盤」と呼ぶ、台東区・浅草寺の北部に広がる住宅街は約六万人の有権者がいる。二〇一二年に当選した後継の辻清人さんも票田としてきたが、今回14区に移され、2区には都心の港区の一部が加わった。

 「台東区生まれ」のアピールで下町人情に訴えてきた辻さんは、戦略の見直しを迫られているようだ。街頭演説で繰り返すのは「北朝鮮の脅威」。外交問題の研究員だった経験を売りにする。十一日には応援の菅義偉官房長官が「今の時代に最も必要な安全保障の専門家だ」と持ち上げた。

 「安倍一強を倒さないと」。十三日夕、中央区で立憲民主の松尾明弘さんが声を上げた。枝野幸男代表の応援以外は、街頭で一人でマイクを握る。一八七センチの長身に悲壮感が漂う。

 一年半前、深谷さんと2区で激闘を続けてきた民進都連顧問の中山義活さん(72)から、弁護士の経験を買われて後継指名を受けた。だが、中山さんは、長男寛進(ひろゆき)さん(45)が七月の都議選で民進を離党して当選、現在都民ファーストの会に所属するため、今回希望の陣営へ。後見人を失った選挙戦は、学生時代の同級生らボランティアが頼りだ。

 希望の党の鳩山太郎さんは昨年、父親で元法相の邦夫さんを亡くした。十一日夜、生まれ育った文京区で「父の果たせなかった『二大政党制の夢』を成し遂げる」と力を込めた。〇五年に都議の椅子を失ってから、〇七年の文京区長選、一〇年の参院選と落選が続いた。「背伸びして父のまねをしてたくさん失敗してきた」。経験を糧に、悲願の国政進出に闘志を燃やす。

 「邦夫先生には薫陶を受けた」と語る小池百合子代表も応援入りを繰り返している。 (川田篤志)

 ◇2 区(3)

辻清人 38 党外交部会長代理 自前<2> =公

松尾明弘 42 弁護士 立新 

鳩山太郎 43 (元)都議 希新 

 (届け出順)

◆「大井町決戦」熱く

3区 品川(7区を除く区域)・大田区(北西部)、島部

 「本人でございます!」。希望の党の松原仁さんが声をからしながら、駅前の通行人にビラを配っていた。線路の向かい側に出ると「アベノミクス効果で景気はよくなっています!」。自民の石原宏高さんの演説が大音量で聞こえてきた。

 十二日夜のJR大井町駅(品川区)。松原さんは東、石原さんは西。それぞれ駅前に事務所を構える。この場所は、島しょ部も含めて「日本一南北に長い」衆院選挙区の主戦場だ。

 積年のライバル対決は二〇〇三年に始まった。通算戦績は石原さんの三勝二敗。松原さんは二連敗中だが、互いに十万票を超す得票の中で前々回は約二千票、前回は約四千票差と、いずれもわずかな差だった。

 3区は、石原さんの父・慎太郎元都知事が国会議員時代に地盤とした。「ずっと石原家を応援してきた」と語る古くからの支持者が多い。一方、松原さんは都議からのたたき上げ。自ら「雑草」「たたかう庶民派」と称し、毎日のつじ立ちで顔を売ってきた。

 毛色の違う二人の応酬は恒例となっている。今回、石原さんは松原さんの政治姿勢に照準を定めた。「態度がころころ変わる人に国政を任せられない」

 松原さんは七月の都議選では民進党の都連会長として、小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会と戦った。それが、衆院解散が伝えられると小池知事との連携を決め、希望の結党メンバーに加わった。

 石原陣営の悩みは「支持者からも安倍首相批判が強いこと」(選対関係者)。石原さんも「森友・加計問題は説明不十分な面がある」と言う。松原さんは、この一点に攻撃材料を絞る。「透明な政治を実現するには政権交代が必要だ」

 共産の香西克介さんは護憲を掲げる唯一の候補者であることをアピールする。「立場、支持政党の違いを超えて憲法を守ろう」と呼び掛ける。 (梅村武史)

 ◇3 区(3)

香西克介 41 党准中央委員 共新 

石原宏高 53 (元)内閣府副大臣  自前<3> =公

松原仁 61 (元)国家公安委員長 希<前><6>

 (届け出順)

     ◇

 二十二日投開票の衆院選で、候補者が激戦を繰り広げる選挙区の様子を紹介する。

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