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自民、改憲条文案は公約せず 消費増税使途を教育に変更

2017年9月20日

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 自民党は十九日、「十月十日公示−同二十二日投開票」の日程を軸に実施する衆院選の公約に関し、改憲の条文案は掲げない方針を決めた。消費税率10%への引き上げの増収分の使途を見直し、教育財源などに充てることを盛り込み、主要争点に位置付ける。与党幹部によると、安倍晋三首相は今月二十五日に記者会見を行い、二十八日召集の臨時国会冒頭の衆院解散を表明する方向で調整に入った。野党は、解散前に国会審議を行うよう要求したが、自民党は拒否する構えだ。 (生島章弘)

 自民党の二階俊博幹事長は十九日の役員連絡会で、首相から早期解散を検討していると伝えられたことを明らかにした。続く記者会見で、改憲の党内論議について「日を区切って結論を出すこと自体が難しい問題で、急ぐ必要はない」と衆院選前の意見集約は見送る考えを示した。

 衆院選で、有権者は条文形式の自民党改憲案に判断を示せないことになる。

 自民党は改憲に関し、首相が提唱する自衛隊の存在明記など四項目で十月中にも自民党案をまとめ、来年の通常国会で発議を目指していた。議論は衆院選後の十一月以降に先送りされ、来年に発議する目標も不透明になった。二階氏は消費税の使途見直しについて、党政務調査会で早急に議論し「政策を固め、国民の批判を仰ぐことは当然」と公約に盛り込む考えを示した。

 消費税を巡っては、税率5%から10%への引き上げを決めた二〇一二年の自民、公明両党と民主党(当時)の三党合意に、増収分の二割を年金・医療・介護・子育て支援の充実に、五割強を財政赤字の削減に充てることを明記している。

 使途見直しに対し、十九日の自民党厚生労働部会では異論が出た。丹羽雄哉元厚生相は記者団に「高齢化社会でお年寄りが不安になっている。思いつきで(見直しを)やられては困る」と語った。与党内では、二〇年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化目標の先送りは避けられないとの見方が強まった。

 民進党は自民党との国対委員長会談で、解散前に首相の所信表明演説や代表質問を行うよう要求した。自民党側は「政府に伝える」と答えるにとどめた。民進党の前原誠司代表は「敵前逃亡・自己保身・疑惑隠し解散だ」と批判した。

<自民の改憲議論> 改憲を巡り自民党が議論しているのは、9条改憲、大学など高等教育を含む教育無償化、大災害などでの緊急事態条項、参院の合区解消−の4項目。

 今月12日の党憲法改正推進本部の全体会合では、9条改憲を議論。戦力不保持などを規定した2項を残したまま自衛隊を明記するとした安倍晋三首相の案に賛成意見が相次いだ。現行の2項を削除し、国防軍の保持を明記した2012年の党改憲草案を重視する意見も残った。

 衆院解散がなければ、秋の臨時国会中に党の案をとりまとめ、衆参両院の憲法審査会に示す方針だった。公明党などとの協議を経て改憲原案を来年の通常国会に正式に提出し、衆参両院の3分の2以上の賛成で発議、国民投票にはかる−との日程を描いていた。

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