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疑問残し決意表明 首相、衆院解散表明

2017年9月26日

安倍首相の記者会見を報じる街頭テレビ=25日午後、東京都千代田区で

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 「首相の地位を守るための解散では」−。安倍晋三首相は二十五日、衆院を解散する意向を正式表明。「消費税の使い道を見直し、国民の信を問う」などと理解を求めたが、首都圏の有権者からは解散の正当性を疑問視する声が相次いだ。一方、小池百合子都知事も同日、総選挙に向けて新党設立と代表就任を発表。街頭などでは期待の声が上がる一方「国政か都政か明確にして」など注文も聞かれた。 =<1>面参照

◆首相「国難」強調大義に熱弁

 「国難突破解散」−。安倍首相は二十五日夕、首相官邸で開かれた記者会見で今の日本を取り巻く状況を「国難」とみなし、解散の大義を強調した。「自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく」「北朝鮮の脅威に対し、国民の平和な暮らしを守り抜く」。北の脅威を引き合いに危機感を演出するかのような勇ましい言葉が続いた。

 「最大の課題」と持ち出したのが少子高齢化。消費税引き上げ増収分を子育て支援に回すことを説明し「国民生活にかかわる重大な決断」と述べた。

 ただ、国民の疑念が晴れていない「森友学園」「加計(かけ)学園」を巡る問題については「丁寧に説明する努力を重ねてきた」と触れるにとどめた。

 「希望の党」を立ち上げる小池氏に対しては「希望というのはいい響き」と持ち上げた。「基本的な理念は同じ」「共通の目標を持っている」とも述べ、全面対決を避けた。 (中沢誠)

◆小池氏、新党代表就任 緑の服で批判を解禁

「希望の党」立ち上げと、代表就任を表明した東京都の小池百合子知事=25日、都庁で

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 「今日は名前の発表が多い」。都庁で上野動物園のパンダの赤ちゃん名を発表した直後、同じ会見室で新党立ち上げの会見に臨んだ小池氏。自身が「戦闘服」と呼ぶ濃緑のスーツを身にまとい、余裕をうかがわせる表情で「希望の党」と書かれたパネルを掲げた。

 これまでは、東京五輪・パラリンピックの準備などで協力が必要な国への批判を控えてきた。しかし、この日は加計学園を巡る問題などを念頭に「お友達関係でやっている間は特区の意味がない」とばっさり。北朝鮮情勢を挙げて「この解散総選挙が本当にふさわしいのか」とも語り、封印してきた「安倍批判」を展開した。

 会見では、知事と党代表を兼務することによる都政運営への影響についての質問も出たが「その懸念は全くあたらない。両方のプラスを感じていただけるよう努力していきたい」とかわした。ただ、ある都幹部は「五輪を前に、国とは対決より連携してほしい」と懸念を隠さなかった。 (木原育子、唐沢裕亮)

◆有権者の声

 千葉県印西市の大学二年佐藤まゆさん(19)は、帰宅途中の電車内でツイッターで流れてきた情報を見て、安倍首相が「国難突破解散」と命名したと知った。「『国民のためなんだよ』とアピールしたいのだろう。でも、支持率が上がってきたところで解散を決めたのは、首相自身の地位を守るためだと思う」と解散に反対。その上で「消費税の増税分の使い道変更について国民の意見を聞く手段は、選挙以外にもあるのでは。選挙の時間を、少子高齢化対策を考える時間に充てた方がいい」と提案した。

 川崎市の自宅で首相の会見をテレビで見た主婦山重響子さん(39)は二児の母親。「北朝鮮のミサイルが原発に当たったら大変なことになるのに原発をやめる姿勢も見えない。国民の安全の保障を考えているとは思えない」と語った。

 小池新党については「自民党よりも右寄りの党になるかもしれない。安倍政権以外を選択しようとする人々の思いとは別に、改憲勢力の肥大化が起きないか心配。安保法制が合憲化、恒久化して米国の戦争に巻き込まれることにならないか」と不安を見せた。

 首相が衆院解散を表明後の午後六時半ごろ、東京・巣鴨の巣鴨地蔵通り商店街で買い物から帰宅途中だった豊島区の無職山田幸一さん(70)は「解散は完全な森友・加計問題隠し。臨時国会での追及を恐れただけ。大義なんてあるわけない」とばっさり。小池新党には「改革をできる人がやればいい。都知事との両立でも仕方ない」と期待する。

 同じころ、東京都港区のJR新橋駅前で待ち合わせをしていた川崎市の会社員黒部郁香(あやか)さん(23)は「都議選で都民ファが勝ったのは、今の政権への失望だろう。ただ今回(小池氏が)挙げた政策を見る限り、きれいごとのように感じる」とした。

 埼玉県川口市の無職星寿子さん(73)は小池新党について「女性は決断が速い」と評価しながらも「国政か都政のどちらに重きを置くか明確にしてほしい」と注文を付けた。 (柏崎智子、山本哲正、片山夏子、清水祐樹、牧野新)

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