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止まらぬ再編激流 衆院冒頭解散

2017年9月28日

自宅を出る「希望の党」代表の小池都知事=28日午前、東京都内で

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 一度は政権を担った民進党が、存亡の機を迎えた。衆院が解散された28日、東京・永田町の民進党本部では党幹部らが朝から厳しい表情で対応を協議した。所属議員たちには、小池百合子東京都知事が代表に就いた新党「希望の党」への期待と、事実上の解党となりかねない戸惑いが交錯。加速する政界再編は「安倍一強」を揺るがすのか、それとも単なる野合に終わるのか。警戒を強める自民党は、厳しい選挙を覚悟する。

 「今回は大義なき解散だ。もう一度政権交代を可能にするための具体的な提案をし、今後の党の在り方を議論したい」

 二十八日午前、民進党の前原誠司代表は、党本部で開かれた決定機関の常任幹事会冒頭でこう述べ、結束を呼び掛けた。出席した議員は緊張した面持ちで、前原氏の発言に聴き入った。

 常任幹事会が休憩に入ると、ある参院議員の党幹部は「みんないろいろな不安を抱えている。テクニカルな話じゃない、本質的な問題だ。われわれ(参院議員)はともかく、衆院議員は命がかかっているんだから」と表情を引き締めた。別の衆院議員の幹部は「前原代表が丁寧に説明し、答えている。会は淡々と進んでいる」と、紛糾には至っていないことを強調した。

 泉健太組織委員長は常任幹事会の会場に入る際、報道陣から、前原代表が無所属で出馬するかを問われ「無所属はないと(本人との)電話で明確に聞いている」と答えた。

 国会内では党の参院議員総会が開かれた。出席者によると、午後一時半からの両院議員総会で前原氏に説明を求めることを確認し、この場では出席者から発言はなかったという。(清水祐樹、宮尾幹成)

◆希望 合流へ動き活発

 希望の党は、小池氏に近い若狭勝氏が早朝から国会内を忙しそうに動き回った。民進党から「合流」のボールを投げられた形の希望の党だが、若狭氏は民進全体との合流には慎重とされており、関係者と対応を話し合ったとみられる。

 民主党政権で拉致問題担当相を務め、二十七日の結党会見に参加した松原仁氏の議員会館事務所には、早朝から訪問客がひっきりなし。松原氏は本会議前、「国民は、したたかな保守改革政党を求めている。民進ではすくえなかった」と合流の理由を語った。

 民進からの離党の意向を早くから表明していた柿沢未途氏は二十八日朝、離党届を提出し、希望の党からの出馬意向を正式に表明。二〇〇九年の衆院選で旧みんなの党で初当選して以来、政党を渡り歩き、希望の党は五つめの所属政党となる。「『また変わるのか』という批判は免れないが、安倍自民党と戦う構図ができた」と強調した。(荘加卓嗣、梅村武史)

◆「都議選大敗の傷まだ癒えぬ」自民

 自民党は、東京都連の会合を二十八日に行うことが前日になって急きょ決まった。午前十時前、東京・永田町の党本部には、会合に出席する東京選出の衆院議員が続々と姿を現し、いずれも硬い表情を見せた。

 七月の都議選では、小池氏が率いた地域政党「都民ファーストの会」が躍進し、自民党は大敗した。それから三カ月弱。二十七日に都連会長に就いた鴨下一郎元環境相は「まだ傷は癒えていない」とぽつり。「相手の出方も分からないのに選挙対策どころではない」と戸惑いものぞかせた。

 自身の選挙区内の自民都議が都議選で一人もいなくなった伊藤達也元金融担当相は、再びの小池新党との対決に「都議選の敗因は国政にもあった。厳しい選挙になる」。今回の解散を野党側は「加計隠し」と批判しており、「加計学園」を巡る問題で自身も関与が取り沙汰された下村博文元文部科学相は、「今はコメントできない」と言葉少なだった。(中沢誠)

◆小池氏無言の朝

 青いブレザー姿で現れた小池氏は、玄関口で報道陣から「解散ですが心境は」と問い掛けられると一瞬立ち止まったが、言葉は発しなかった。政務用のワゴン車に乗り込んだ後、後部座席の窓を半分下ろし、「総理大臣」から一文字取った愛犬「そうちゃん」に手を伸ばしてから出発した。愛犬とのあいさつは日課という。(木原育子)

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