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無所属はつらいよ 政見放送なし 比例復活なし!選挙資金なし!!

2017年10月5日

記者会見で無所属での立候補を表明した、広島3区から出馬予定の元東京都議塩村文夏氏=3日、広島市で

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 衆院選に向けて新党の公認発表が相次ぐ中、こうした動きに加われずに無所属となった出馬予定者は危機感を募らせている。政党の看板を掲げられず、資金面などからも活動に差が生じるためで知名度の高いベテランはまだしも、新人らは難しい対応を迫られそうだ。

 「最初は広く民進党の考えが入る余地があると思っていたが、少しずつ違ってきた」。広島3区から出馬予定の元東京都議塩村文夏(あやか)氏は、民進党ではなく無所属での立候補を表明した。希望の党入りを目指していたが結局、三日の第一次公認に含まれなかった。

 二〇一四年、都議会の一般質問中に、複数の男性議員から「早く結婚した方がいい」などのセクハラやじを受けたことが、社会的な問題として広く取り上げられた。今年二月、民進党からの衆院選出馬を表明。広島県福山市出身の被爆二世でもあり「広島県から平和施策について取り組みたい」と意欲をみせていた。

 だが、希望への合流を巡り民進党は割れた。「何がいつ決まるか分からない状態で、無所属しかないという状況になってしまった」と塩村氏。選挙ノウハウなどに関する政党の支援が受けられず、陣営幹部は「正直痛い」と不安をのぞかせる。

 長野1区から出馬予定の民進党前職、篠原孝氏は四日、「政治理念が異なる」として希望の公認を辞退して無所属で出馬すると表明。無所属だと小選挙区と比例代表の重複立候補もできなくなるため、「小選挙区で勝つしかない。非常に危険な道だ」。

 野田佳彦前首相や岡田克也元民進党代表、自由党の小沢一郎共同代表ら“大物”も無所属を選んだ。政治的な判断が背景にあるとされる。

 日本大の岩井奉信教授(政治学)は「離合集散を繰り返す政党への批判がある現状では、どの党にも属さないことで有権者にアピールできる可能性はある。ただ、新人や若手の場合は、資金と支援という物心両面で苦しむだろう」と見通す。

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 衆院選は政党公認候補と無所属候補では、可能な運動内容に違いがある。小選挙区比例代表並立制の導入を柱とする一九九四年の公選法の改正で、政党中心の選挙の実現を目指すことが掲げられたためで、無所属の方が事実上、不利だ。

 比例名簿は政党が作成するため、無所属候補は比例への重複立候補ができない。選挙区で敗れれば復活当選のチャンスはなく、そのまま落選となる。政党から選挙資金として支払われる公認料も得られない。

 選挙期間中の運動内容も隔たりが大きい。公認候補の場合、選挙カーは個人の一台に加えて、都道府県ごとに、届け出候補者数に応じた数の政党の車が使用可能だ。公費で賄われる新聞広告も、無所属候補は個人の五回以内のみ。政党にはこれに加え、都道府県ごとに届け出候補者数に応じた広告スペースが与えられる。ビラも同様で、公認候補は届け出政党の政党用ビラを配ることができる。

 政見放送に至っては、届け出政党が制作した映像や音声をそのまま放送することになっており、無所属は経歴放送のみ。政党の看板にも頼れず、知名度の低い無所属候補にはハードルが高い。 (荘加卓嗣)

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